不倫慰謝料で相手の弁護士から電話が来たら?話す前の注意点を解説
不倫慰謝料で相手の弁護士から電話が来たら?話す前の注意点を解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月9日 最終更新日:2026年10月9日
見知らぬ番号からの着信に出たら、「○○さんの代理人弁護士です。不貞行為の件でお電話しました」と告げられた――。不倫慰謝料を請求される場面では、内容証明郵便より先に、あるいはそれと前後して、相手の弁護士から電話がかかってくることがあります。突然のことで動揺し、その場で謝ったり、支払いを約束してしまったりする方も少なくありません。
この記事では、不倫慰謝料の件で相手の弁護士から電話が来たときに、話す前に知っておきたい注意点を、請求された側の視点で解説します。電話で言ってはいけないこと、本物の弁護士かどうかの確認方法、書面でのやり取りに切り替える伝え方、弁護士に依頼した後の連絡の流れまでを順に説明します。
結論として、相手の弁護士から電話が来ても、その場で不倫を認めたり、慰謝料の支払いを約束したりする必要はありません。氏名・事務所名・連絡先を控え、「内容を確認して回答しますので書面でお送りください」と伝えて、いったん電話を終えるのが基本です。そのうえで請求内容を確認し、必要に応じて弁護士に相談してから回答するのが、不利な結果を避けるための近道です。
不倫慰謝料の請求で相手の弁護士から電話が来るのはどんなときか
不倫(不貞行為)の慰謝料は、民法709条・710条の不法行為に基づく損害賠償として請求されます。請求する側が弁護士に依頼した場合、まず内容証明郵便などの書面で請求するのが一般的ですが、次のような場面では電話で連絡が来ることがあります。
- 書面を送る前に、住所や本人であることを確認したいとき
- 内容証明郵便を送ったが、回答期限までに返事がないとき
- 書面が受け取られずに返送されてきたとき
- 交渉の途中で、金額や支払方法の意向を早めに聞きたいとき
弁護士から電話が来たということは、相手が本格的に請求する意思を固めているサインですので、無視せず、しかし慌てずに対応することが大切です。
電話で言ってはいけないこと・してはいけないこと
相手の弁護士は依頼者の利益のために動いています。電話での発言は、後の交渉や裁判で証拠として扱われる可能性があることを意識してください。
| 避けたい言動 | 理由 |
|---|---|
| その場で不倫の事実を詳しく認める | 交際の期間・回数・肉体関係の有無などは慰謝料額に影響します。事実関係を整理しないまま話すと、後で訂正するのが難しくなります。 |
| 「払います」「分割なら払えます」と約束する | 支払いの約束は、債務の存在を認める「承認」にあたり得ます。民法152条1項により、承認があると時効はその時から新たに進行を始めます。 |
| 相手の言う金額にその場で同意する | 請求額が相場より高めに設定されていることもあります。増減額の事情を確認する前に合意するのは避けましょう。 |
不倫慰謝料の消滅時効は、民法724条により、被害者が損害及び加害者を知った時から3年(不法行為の時から20年)とされています。時効が問題になりうる事案では、電話での一言が結果を左右することもあるため、特に慎重な対応が必要です。請求額が妥当かどうかの考え方は、不貞慰謝料が高すぎると感じたときの相場との比較と減額交渉のポイントで詳しく解説しています。
本物の弁護士かどうかを確認する方法
残念ながら、弁護士や法律事務所の名前をかたる不審な電話や詐欺も報告されています。電話の相手が名乗った内容は、次の方法で確認しましょう。
- 氏名・事務所名・所属弁護士会を聞いて控える:正規の弁護士であれば、聞かれて困ることはありません。
- 日本弁護士連合会の「弁護士検索」で調べる:日弁連のウェブサイトでは、現在登録されているすべての弁護士の基本情報を調べることができます。
- 自分からかけ直す:いったん電話を切り、検索結果や事務所の公式ウェブサイトに記載された番号へ自分から電話すれば、なりすましを見分けられます。
振込先として事務所とは無関係に見える個人名義の口座を急いで指定されるなど、少しでも不審な点があれば、支払いの前に必ず確認してください。
電話を受けたときの対応手順と伝え方の例
実際に電話を受けたときは、次の順序で対応すると落ち着いて話を終えることができます。
1. 相手の情報と用件を聞き取る
弁護士の氏名、事務所名、電話番号、誰の代理人か、何についての連絡かを確認し、日時とあわせてメモします。自分が当事者となっている会話を録音すること自体は、一般に直ちに違法になるものではないと解されていますが、録音できない場合でもメモは必ず残しましょう。
2. 書面での連絡を求める
「突然のことで内容を把握できていませんので、ご請求の内容を書面でお送りください。確認のうえ回答します」と伝えれば十分です。書面で受け取れば冷静に検討でき、弁護士にも相談しやすくなります。
3. 職場への連絡は控えてもらう
職場に電話がかかってきた場合は、詳しい話はせず、「この件は個人の携帯電話か書面でご連絡ください」と連絡先を指定しましょう。
4. 回答の期限と方針を決める
書面が届いたら回答期限を確認し、事実関係・請求額・支払能力を整理したうえで回答します。回答書の書き方は不貞慰謝料の請求への回答書の書き方と反論のポイントをご覧ください。
弁護士に依頼すると相手の弁護士とのやり取りはどう変わるか
請求された側が弁護士に依頼すると、こちらの弁護士から相手の弁護士へ受任通知を送り、以後の連絡窓口は依頼した弁護士に一本化されるのが通常です。日本弁護士連合会の「弁護士職務基本規程」52条は、弁護士は相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない、と定めています。そのため、依頼後は相手の弁護士からあなた個人に直接電話がかかってくることは、原則としてなくなります。
相手の弁護士とご自身で対応する場合と、弁護士に依頼した場合の違いについては、不貞慰謝料の相手方に弁護士がついたときの対処法でも詳しく紹介しています。また、不貞慰謝料の請求を受けた方への当事務所の対応内容は、不貞慰謝料の取扱分野ページにまとめています。
なお、夜のお仕事やパパ活で知り合った相手について、既婚者とは知らなかったのに慰謝料を請求されたというご相談もあります。こうしたケースでは減額や支払義務そのものを争える場合があり、詳しくは夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応ページでご案内しています。
よくある質問
相手の弁護士からの電話に出なかったらどうなりますか?
電話に一度出なかったことだけで直ちに不利益が生じるわけではありません。多くの場合、内容証明郵便などの書面で請求が届きます。ただし、書面も含めて対応しないまま放置を続けると、訴訟を起こされる可能性が高まります。電話に出られなかった場合でも、書面が届いたら期限を確認し、早めに対応方針を決めることが大切です。
電話で「不倫を認めますか」と聞かれたら、どう答えればよいですか?
その場で認める・否定するのではなく、「内容を確認したうえで回答しますので、書面でお送りください」と伝えるのが無難です。電話での発言も、後に交渉や裁判で証拠として扱われる可能性があります。事実関係や請求額に争いがある場合は特に、回答前に弁護士に相談することをおすすめします。
相手の弁護士との電話を録音してもよいですか?
自分が当事者となっている会話を録音すること自体は、一般に直ちに違法になるものではないと解されています。録音が難しい場合でも、日時・相手の氏名と事務所名・話の内容をメモしておくと、後で弁護士に相談する際に役立ちます。
電話の相手が本当に弁護士か確認する方法はありますか?
日本弁護士連合会のウェブサイトにある弁護士検索で、現在登録されている弁護士の氏名や事務所を調べることができます。名乗られた氏名・事務所名を控えていったん電話を切り、検索結果やその事務所の公式ウェブサイトに記載された番号へ自分からかけ直すと、確実に確認できます。
職場に相手の弁護士から電話がかかってきた場合はどうすればよいですか?
職場で詳しい話をする必要はありません。「この件は個人の携帯電話か書面でご連絡ください」と伝え、連絡先を指定しましょう。弁護士に依頼すれば、以後の連絡窓口を依頼した弁護士に一本化できます。
まとめ|電話ではその場で決めず、書面で確認してから対応を
- 相手の弁護士から電話が来ても、その場で不倫を認めたり、支払いを約束したりする必要はない
- 支払いの約束は時効の更新事由となる「承認」にあたり得るため、慎重に
- 氏名・事務所名を控え、日弁連の弁護士検索などで本物の弁護士か確認する
- 「書面でお送りください」と伝え、請求内容を確認してから回答する
- 弁護士に依頼すれば、相手の弁護士とのやり取りは依頼した弁護士が窓口となる
相手が弁護士を立てている以上、こちらだけが一人で対応すると、知識や交渉経験の差から不利な条件で合意してしまうおそれがあります。横浜の弁護士として不貞慰謝料の請求を受けた方からのご相談を多く扱ってきた経験からも、電話を受けた直後の早い段階で弁護士に相談することが、減額や適切な解決につながりやすいといえます。
相手の弁護士から連絡が来て不安な方へ
横浜のタングラム法律事務所では、不貞慰謝料を請求する側・請求された側の双方について、交渉から訴訟まで豊富な対応実績を有しております。相手の弁護士から電話や書面が届いた段階でご相談いただければ、回答の内容から以後の交渉まで、弁護士が窓口となって対応いたします。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。