株主総会・取締役会の議事録を作成しなかったらどうなる?法的リスクと正しい作成方法を横浜の弁護士が解説
株主総会・取締役会の議事録を作成しなかったらどうなる?法的リスクと正しい作成方法を横浜の弁護士が解説
「株主総会は毎年開いているけれど、議事録は後回しになりがち」「取締役が自分と配偶者だけだから、取締役会の議事録なんて形式的に書けばいい」——中小企業の経営者の方から、このような声を聞くことがあります。しかし、議事録の作成・保存は単なる社内ルールではなく、会社法が定める法的義務です。不作成や記載不備が積み重なると、過料の制裁や登記手続のトラブルに発展することがあります。本記事では、株主総会および取締役会の議事録について、作成義務の根拠・記載事項・保存ルール・不作成のリスクをまとめて解説します。
株主総会・取締役会の議事録とはどのような書類か
議事録とは、会社の重要な意思決定機関における審議の経過や決議の内容を記録した書類です。株主総会では株主が会社の重要事項を決定し、取締役会では取締役が業務執行の方針を決定します。これらの会議が適法に開催され、どのような議題が審議され、どのような結論に至ったかを書面(または電磁的記録)に残しておくことが、会社の意思決定の透明性と法的安定性を確保するうえで欠かせません。
中小企業においては、株主=取締役=代表者という一人会社や同族会社の形態も多く、「実際には会議を開いていない」「議事録は登記申請が必要になったときだけ後付けで作る」という実態もみられます。しかし、この慣行には深刻な法的リスクが潜んでいます。
議事録作成・保存は会社法上の義務——根拠条文を確認する
株主総会議事録については、会社法第318条第1項が「株式会社は、株主総会の日から10年間、当該株主総会の議事録をその本店に備え置かなければならない」と規定しています。また、議事録の記載事項については会社法施行規則第72条が詳細に定めています。
取締役会議事録については、会社法第369条第3項が「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役はこれに署名し、又は記名押印しなければならない」と規定しています。保存期間は会社法第371条第1項により、取締役会の日から10年間、本店に備え置くことが義務づけられています。
議事録を作成・保存しなかった場合の法的リスク
議事録の作成・保存義務に違反した場合のリスクは、主に以下の3つが挙げられます。
(1)100万円以下の過料
会社法第976条第7号は、「定款、株主名簿、議事録その他の書面若しくは電磁的記録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をした」場合に、取締役などの役員が100万円以下の過料に処せられると定めています。議事録の不作成や重要事項の記載漏れは、この規定の適用対象となり得ます。過料は刑事罰ではありませんが、裁判所から通知が届き支払義務が生じるため、経営者にとって無視できない制裁です。
(2)登記手続ができなくなる
役員変更、本店移転、目的変更など、多くの登記申請においては株主総会議事録や取締役会議事録が法務局への添付書類として必要とされます。議事録が存在しない、あるいは不備がある状態では、こうした登記申請を行うことができず、会社の実態と登記簿の記載が乖離してしまいます。登記懈怠(登記を怠ること)それ自体も過料の対象になることがあるため、二重のリスクとなり得ます。
(3)第三者・取引先からの信用失墜リスク
株主や会社債権者は、会社法第318条第4項に基づき、営業時間内はいつでも株主総会議事録の閲覧・謄写を請求できます。取締役会議事録についても、監査役や会計監査人等が閲覧を求める場面があるほか、訴訟・調査の過程で開示が問題となることもあります。こうした局面で議事録が整備されていなければ、会社のガバナンス上の問題として対外的な信用低下につながる可能性があります。取引先から法務デューデリジェンスを求められるM&Aの場面でも、議事録の不備は大きなマイナスとなります。
議事録に必ず記載しなければならない事項
会社法施行規則に定められた記載事項のうち、実務上とくに見落とされやすい項目を整理します。
| 区分 | 主な必要記載事項 |
|---|---|
| 株主総会議事録(施行規則第72条) | 開催日時・場所、出席者(取締役・監査役等の氏名)、議長の氏名、各議案の審議の経過と結果、議決に加わることができない取締役がいる場合その旨、反対意見・意見陳述があった場合はその内容の要領 |
| 取締役会議事録(施行規則第101条) | 開催日時・場所、出席した取締役・監査役等の氏名、議事の経過と結果、反対した取締役がいる場合その旨及び理由、特別利害関係を有する取締役がいる場合その旨、議長の氏名 |
特に「各議案の決議事項」だけを記録して「審議の経過の要領」を省略したり、反対意見や監査役の発言を記載しなかったりするケースは要注意です。記載の不備は、前述の過料リスクを招くとともに、後日の紛争においても当該決議の有効性が争われる原因になり得ます。
取締役会議事録の署名・記名押印——電子化はできるか
取締役会議事録が書面で作成されている場合、出席した取締役及び監査役全員が署名または記名押印しなければなりません(会社法第369条第3項)。複数拠点に取締役が散在する場合、全員分の押印書類を集めるのは手間がかかるという声もよく聞かれます。
この点について、法務省は2020年5月に見解を示し、クラウド型の立会人型電子署名サービスを用いて電子的に署名することも、会社法上の要件を充たし得ると解されるようになりました。議事録を電磁的記録(電子ファイル)として作成する場合には、法務省令で定める措置(電子署名)をとることで書面による署名・押印に代えることができます(会社法第369条第4項)。
ただし、取締役会議事録を登記申請に使用する場合、添付書類として法務局に提出する際には、電子署名の種別や要件が厳格に定められています。実務上は、登記申請を予定している場合の電子化については事前に専門家に確認することをお勧めします。横浜の弁護士や司法書士に相談することで、適切な対応方法を確認できます。
議事録の備置き・閲覧請求への対応
適切に作成された議事録は、法定期間(株主総会・取締役会ともに10年間)にわたって本店に備え置く義務があります。単にファイリングしておくだけでなく、株主や債権者から閲覧・謄写の請求があった場合に対応できる体制が求められます。
株主総会議事録については、株主や債権者が閲覧・謄写を請求できます(会社法第318条第4項)。一方、取締役会議事録の閲覧請求が可能なのは、株主が権利行使のために必要な場合であって、かつ裁判所の許可を得た場合に限られます(会社法第371条第2項)。このように、議事録の種別によって閲覧請求権を行使できる者の範囲が異なるため、請求を受けた際には制度を正確に理解したうえで対応することが重要です。
実務でよくある議事録のNGパターン
横浜をはじめとする神奈川県内の中小企業の法務相談を受けるなかで、弁護士として多く見聞きするNGパターンを以下に挙げます。いずれも「ありがちだが見落とされやすいリスク」ばかりです。
- 定時株主総会の議事録を毎年作成しているが、役員変更や報酬決議の記載が漏れている——決議していない扱いとなり、役員報酬の損金算入に影響するケースがあります。
- 書面による株主総会の同意書(みなし総会・会社法第319条)のみを作成し、議事録を別途作成していない——同意書のほかに議事録作成が必要と解されています。
- 取締役会の決議を「メールで回答を得た」として議事録を作成しない——取締役会の書面決議(みなし決議・会社法第370条)を用いる場合でも、議事録の作成は必要です。
- 代表取締役が決定できる軽微な事項として議事録を省略している——重要な業務執行事項は取締役会決議が必要であり、一部の事項については定款や取締役会決議による委任がなければ代表取締役単独では決定できない場合があります。
- 日付を空欄のまま押印した議事録を複数枚用意している——後日の訴訟等で虚偽議事録の問題が生じるリスクがあります。
まとめ——議事録整備は経営の土台づくり
議事録の作成・保存は、会社法が定める基本的な義務であり、これを軽視することは100万円以下の過料リスクや登記手続の停滞を招くだけでなく、会社のガバナンスに対する信頼性を損なうことにもつながります。特に、M&Aや資金調達、役員変更など、対外的な手続きが生じたときに初めて議事録の不備が発覚するケースも少なくありません。
議事録の書式や記載内容の確認、取締役会・株主総会の適切な運営方法については、企業法務に詳しい弁護士に相談することが、問題の早期発見と会社の法的リスクの低減につながります。横浜・神奈川を中心に活動するタングラム法律事務所では、中小企業の株主総会・取締役会の運営に関するご相談にも対応しております。議事録の整備や会社法対応についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。議事録の記載内容の確認、株主総会・取締役会の適法な運営方法、会社法コンプライアンス全般についてもお気軽にご相談ください。
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