タングラム法律事務所

発信者情報開示請求書を自分で書く方法|書式と記載例を弁護士が解説

発信者情報開示請求書を自分で書く方法|書式と記載例を弁護士が解説

発信者情報開示請求書を自分で書く方法|書式と記載例を弁護士が解説

発信者情報開示請求書を自分で書く方法|書式と記載例を弁護士が解説

発信者情報開示請求書を自分で書く方法|書式と記載例を弁護士が解説

匿名の投稿で誹謗中傷を受けたとき、「まずは自分でサイト運営者やプロバイダに、投稿者の情報を教えてほしいと求められないだろうか」と考える方は少なくありません。実際、業界団体が「発信者情報開示請求書」という標準書式を公開しており、被害を受けた本人が作成して送ることができます。

この記事では、書式の入手先、各欄の書き方、添付書類、送付後に進む手続を整理し、あわせて裁判外の請求にどこまで期待できるのかという現実的な限界を、横浜でインターネット上の権利侵害事件を扱う弁護士の視点から説明します。

発信者情報開示請求書とは|情プラ法5条に基づく裁判外の請求

インターネット上の投稿で権利を侵害された人は、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」。旧・プロバイダ責任制限法が令和6年改正で名称変更され、2025年4月1日に施行されました)5条により、サイト運営者やアクセスプロバイダに対して発信者情報の開示を請求できます。

この開示請求権は実体法上の請求権ですから、必ず裁判所を通さなければならないわけではなく、プロバイダ等が5条の要件を満たすと判断すれば裁判外で開示することも可能です。その裁判外の請求に使う標準書面が発信者情報開示請求書で、「情報流通プラットフォーム対処法 発信者情報開示関係ガイドライン」(第10版・令和7年5月)の書式①として公開されています。かつての法律名にちなみ「テレサ書式」と呼ばれることもあります。

なお、投稿を消してほしいという請求は別の手続です。送信防止措置依頼書の書き方を解説した記事もあわせてご覧ください。

書式の入手先

書式①は、ガイドラインを策定する協議会が運営する「情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト」(isplaw.jp)から入手できます。プロバイダによっては自社サイトで同じ書式や独自の様式を案内していますので、請求先が決まっているならその案内も確認してください。

ガイドラインは、請求者はできる限り書式①によるべきだとする一方、プロバイダ等が書式①に固執して他の方式の請求に一切応じない対応は相当でないともしています。書式が手に入らなくても、必要事項を書いた書面で請求すること自体は可能です。

各欄の書き方

記載欄書くべき内容
請求者権利を侵害された本人の住所・氏名・連絡先。法人は代表者名を記名
特定電気通信設備等投稿が掲載されたページのURL。経由プロバイダへの請求ではIPアドレス・ポート番号・タイムスタンプ等
掲載された情報投稿日時、投稿番号、スレッド名、投稿本文
侵害された権利名誉権、プライバシー権、著作権、商標権など
権利が明らかに侵害されたとする理由この書面の中心。後述
開示を受けるべき正当理由損害賠償請求権の行使など5つの選択肢から選ぶ
開示を請求する発信者情報氏名・住所・IPアドレス等14項目から必要なものを選ぶ
発信者に示したくない私の情報氏名・理由・証拠のうち示したくないものを選ぶ

投稿はURLと本文をセットで特定する

プロバイダ等は、請求書のURLと、対象を合理的に特定できる情報(スレッドのタイトル、書込み番号、その他の特徴)をもとに、その投稿が掲載されていたかを確認します。URLだけで本文を省略したり、本文だけでURLを書かなかったりすると、特定が不十分として補正を求められます。投稿が削除されると過去の掲載の事実を確認することは一般に困難ですので、請求の前に必ず証拠を保存してください。

「権利が明らかに侵害されたとする理由」が最大の山場

情プラ法5条1項1号は、開示の要件として「権利が侵害されたことが明らか」であることを求めます。ここでの「明らか」とは、権利侵害があったことに加え、違法性阻却事由をうかがわせる事情が存在しないことまでを意味すると解されています。

名誉毀損では、判例上、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た投稿で、摘示された事実の重要な部分が真実であると証明されたときは違法性が阻却されます(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁)。意見・論評による名誉毀損も、前提事実の重要な部分が真実であれば同様です(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁)。

そのため請求書には、①投稿で自分の社会的評価が下がったこと、②公共の利害に関する事実ではないこと、③公益を図る目的ではないこと、④摘示された事実が真実ではないこと、を具体的に書きます。ガイドラインは、請求者は②③④のいずれかを主張・立証すれば足り、発信者が真実と信じたことに相当の理由がないことまでの主張立証は要しないとしています。感情的な記載ではなく、どの表現がどのような事実を示し、それが事実に反することをどう示せるのかを淡々と書き分けることが重要です。

開示を求める情報の選び方

掲示板やSNSの運営者に対する請求では、通常この段階で氏名や住所は保有されていないため、IPアドレスとタイムスタンプの開示が中心になります。開示される情報の範囲は発信者情報開示でどこまでわかるかを解説した記事で詳しく扱っています。

添付書類と送付方法

  • 本人性を証明する資料:個人は運転免許証やパスポートの写し、法人は資格証明書の原本
  • 権利侵害を証する資料:投稿画面の印刷物など
  • 権利者であることを示す資料:著作権・商標権を理由とする場合

証拠は、プロバイダ等が使用する分と発信者への意見照会用の2部を添付します。発信者に見せたくない証拠がある場合は、見せてよい証拠だけをまとめたものを意見照会用にしてください。送付方法は、ガイドラインが原則として書面によることとしています。内容証明郵便までは求められていませんが、配達の記録が残る方法で郵送するのが安全です。

プロバイダのログ保存期間は永久ではなく、準備をしている間に消えてしまうことがあります。準備に時間を要するやむを得ない事情があるときは、開示請求に先立って発信者情報を消去しないよう「保全要請」をすることがガイドライン上想定されています。期限の考え方はログ保存期間と消去禁止命令を解説した記事をご確認ください。

請求書を送った後の流れ

プロバイダ等は、記載漏れの確認、請求者の本人確認、発信者情報の保有の確認、侵害情報の確認を行ったうえで、原則として発信者に意見照会を行います(情プラ法6条1項)。回答期間は、ガイドライン上、照会書の受領日から2週間とされています。

発信者が開示に同意すれば速やかに開示されます。同意しない旨の回答があった場合や2週間経っても回答がない場合は、プロバイダ等が提出資料をもとに権利侵害の明白性と正当な理由を判断し、要件を満たさないと判断したときは、その理由とともに開示しない旨の通知が届きます。

裁判外の請求にどこまで期待できるか

ここが、自分で請求書を作るかを考えるうえで最も大切な点です。プロバイダ等が要件の判断を誤って開示すると、発信者に対して損害賠償責任を負うおそれがあるため、ガイドラインは5条の要件を「確実に満たす」と考えられる場合を明確化するという慎重な立て付けになっています。

とくに名誉毀損については、ガイドライン自身が、一般的な基準を設けることは難しく、発信者が公益目的のないことや書込みが真実でないことを自認した場合などを除き、判断に疑義があるときは裁判所の判断に基づいて開示することを原則とする、と述べています。誹謗中傷を理由とする裁判外の開示請求は、応じてもらえないことが少なくないということです。他方、著作物の丸写しや偽ブランド品の出品といった著作権・商標権の侵害では、裁判外での開示が認められる余地がガイドライン上も明記されています。

応じてもらえない場合は、発信者情報開示命令の申立てなど裁判手続に進むことになります。手続全体の見取り図は発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページで、本人で進める場合の限界は発信者情報開示請求を弁護士なしで行えるかを解説した記事で整理しています。

自分で行う場合の限界と、弁護士に依頼した場合の違い

  • 時間切れのリスク:任意請求に数か月を費やす間にログの保存期間が経過し、後から裁判手続を起こしても投稿者にたどり着けなくなることがあります
  • 主張の組み立て:どの表現を事実の摘示と構成し、どの資料で真実でないことを示すかは、後の裁判手続の主張にもそのまま影響します
  • 手続の負担:弁護士が代理人となる場合、委任状の添付は通常不要とされ、代理人が本人であることを確認した旨を表明すれば本人性を証明する資料の添付も省略できるとされています
  • 二段階目の請求:IPアドレスが開示されても、次はアクセスプロバイダへの請求が必要で、こちらは裁判手続によることがほとんどです

弁護士に依頼すれば、任意請求と裁判手続のどちらから入るべきかを、投稿内容とログの残存期間から逆算して判断できます。分野別の解説は特設ページ一覧にもまとめています。

よくある質問

発信者情報開示請求書を送れば、必ず投稿者の氏名や住所がわかりますか。

必ずわかるとはいえません。裁判外の請求では、プロバイダ等が情プラ法5条の要件を満たすと確実に判断できる場合に限って開示に応じるのが実務です。ガイドラインも、判断に疑義があるときは裁判所の判断に基づいて開示することを原則としています。応じてもらえない場合は、発信者情報開示命令の申立て等の裁判手続を検討することになります。

発信者情報開示請求書は内容証明郵便で送る必要がありますか。

内容証明郵便であることは要件ではありません。ガイドラインが請求を原則として書面によることとしているのは、請求の事実と内容の記録を正確に残すためです。証拠書類を同封する必要もあるため、実務では配達の記録が残る方法で郵送することが多いといえます。

開示請求書を送ると、投稿者に自分の名前が伝わりますか。

プロバイダ等は原則として請求書の記載内容を発信者に示して意見照会を行います。ただし標準書式には「発信者に示したくない私の情報」の欄があり、請求者が個人の場合の氏名、権利が明らかに侵害されたとする理由、添付した証拠については、示さないよう求めることができます。もっとも、請求内容から請求者が誰であるかを推知されることはあり得ます。

開示された発信者の氏名や住所を、SNSで公表してもよいですか。

してはいけません。情プラ法7条は、開示を受けた者が発信者情報をみだりに用いて、不当に発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為を禁じています。公表すれば、逆にご自身が損害賠償責任を負うおそれがあります。開示された情報は、損害賠償請求など本来の目的の範囲でのみ用いてください。

まとめ

発信者情報開示請求書は、情プラ法5条に基づき裁判外で開示を求める書面で、標準書式が公開されており本人でも作成できます。要点は、投稿をURLと本文でセットに特定すること、「権利が明らかに侵害されたとする理由」の欄に、社会的評価の低下と、公共性・公益目的・真実性がないことを具体的に書き分けること、本人確認資料と証拠を2部添付することです。

もっとも、誹謗中傷を理由とする裁判外の開示請求は、プロバイダ側が慎重に判断するため応じてもらえないことが少なくありません。ログ保存期間という時間的な制約がある以上、任意請求に時間をかけすぎることが、かえって投稿者の特定を遠ざけることもあります。書面を送る前に、任意請求で通るタイプの事案なのか、最初から裁判手続に進むべきなのかを見極めておくことが結果を大きく左右します。判断に迷われたときは、早い段階で弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求をご検討の方へ

タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、インターネット上の誹謗中傷に関する削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求について多数の実績を有しております。ご自身で請求書を送るべきか、裁判手続から入るべきかの見立てを含めてご相談いただけます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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