Google口コミへの返信で注意すべき法的リスク|弁護士が解説
Google口コミへの返信で注意すべき法的リスク|弁護士が解説
身に覚えのない低評価がついた。書かれている内容が事実と違う。こうした口コミを前に「きちんと説明したい」とお考えになるのは自然なことです。Googleビジネスプロフィールには返信機能があり、その場ですぐに反論できてしまいます。
しかし返信は、当事者間のやりとりではなく、検索結果に残る公開の場での発言です。実務では、書き方を誤ったために事業者側が責任を問われたり、その後の削除請求が難しくなったりする例が見られます。この記事では、Google口コミへのオーナー返信に潜む法的リスクと、安全な返信の考え方、返信ではなく法的手続を選ぶべき場面を、横浜の弁護士が解説します。
Google口コミへの返信は「公開の場での反論」である
まず返信機能の仕様を押さえておきます。Googleビジネスプロフィールのヘルプによれば、口コミに返信するにはオーナー確認を済ませている必要があり、返信は公開前にGoogleのコンテンツポリシーへの適合性が審査されます(通常10分以内、最長で30日ほどかかる場合もあるとされています)。公開された返信は事業者からの返信として口コミの下に表示され、担当者の個人名は表示されません。
重要なのは、返信が公開されると口コミを投稿したユーザーに通知が届き、ユーザーは返信を読んだ後でも口コミを変更できるという点です。口コミが変更されると、表示される日付も最新の変更日に更新されます。つまり返信は、①不特定多数が読む場所に、②検索結果に残る形で、③相手に通知を送りながら行う反論です。この3点が、以下の法的リスクの土台になります。
最も多いリスク——返信で顧客情報を明かしてしまう
実務で目立つのは、事実関係を説明しようとするあまり、投稿者が誰であるかを推知させる情報や、来店・受診の事実そのものを返信に書いてしまう類型です。
個人情報保護法との関係
個人情報保護法27条1項は、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合など一定の例外に当たらない限り、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。口コミへの返信は不特定多数が閲覧できる場所への公表ですから、顧客の情報を返信に記載する行為が、この「第三者への提供」に当たると評価される可能性があります。
とりわけ注意を要するのが、同法2条3項の要配慮個人情報です。本人の病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などがこれに当たり、いわゆるオプトアウトによる第三者提供も認められていません。医療機関や介護事業者が返信で「そのような治療は行っておりません」といった形で受診内容に触れれば、病歴に関わる情報を公表したと評価されるおそれがあります。
守秘義務との関係
医師・薬剤師・助産師・弁護士などが、その業務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らした場合には、刑法134条1項の秘密漏示罪に当たり得ます(同罪は親告罪とされています)。口コミへの反論という動機があっても、それが「正当な理由」として当然に認められるわけではありません。
・来院日・施術内容・処方内容・診断名など、受診や利用の具体的な事実
・「○月○日にご来店の△△様ですね」など、投稿者を特定できる情報
・過去のクレーム歴、支払状況、キャンセル歴といった顧客の属性情報
・投稿者の家族構成、勤務先、居住地域などの推測を含む記載
返信が名誉毀損・プライバシー侵害になる場合
返信の内容が投稿者の社会的評価を低下させるものであれば、事業者の側が名誉毀損として責任を問われる可能性があります。「他店でも同様のクレームを繰り返している」「金銭目的の常習者だ」といった記載は、そう感じられる事情があったとしても、裏付けなく公表すれば危険です。
プライバシー侵害についても、裁判例では、その事実を公表されない法的利益と公表する理由とを比較衡量し、前者が優越する場合に不法行為が成立するという枠組みが用いられています(最高裁平成6年2月8日判決・ノンフィクション「逆転」事件)。「低評価をつけられたから」という事情だけでは、顧客の私的な情報を公表する理由として足りないと評価される可能性が高いといえます。両者の要件の違いはプライバシー侵害と名誉毀損の違いを解説した記事を、中傷に言い返すこと自体のリスクは誹謗中傷に言い返した場合のリスクの記事をご覧ください。
返信が削除請求・投稿者特定に与える影響
返信をしたこと自体で削除請求の道が閉ざされるわけではありません。ただし、実務上は次の点に注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 口コミが編集されるおそれ | 返信は投稿者に通知されます。投稿者が口コミを書き換えると、表示される日付も更新され、証拠として保全していた内容と食い違いが生じます |
| 投稿が増える誘因になる | 反論を受けた投稿者が、別のアカウントや別のサイトに新たな投稿を行い、被害が拡大することがあります |
| 返信内容が不利な事情になりうる | 返信が挑発的・断定的であれば、紛争全体の評価の中で事業者側に不利な事情として扱われる可能性があります |
そのため、削除請求や投稿者特定を検討している場合には、返信をする前に口コミの現状をスクリーンショットとURLで保全しておくことを強くお勧めします。確保すべき証拠や削除の見込みについては発信者情報開示請求・削除請求の取扱いページを、掲示板・SNS・地図サービスなどサイトごとの違いはサイト別の削除・投稿者特定のページをご覧ください。
法的リスクを抑えた返信の書き方
そもそも返信しないという方針も経営判断としては十分にあり得ます。返信する場合は、次の原則を守ることでリスクを大きく下げられます。
| 避けたい返信 | 安全な言い換え |
|---|---|
| 「○月○日にご来院の方ですね。あの日の処置は……」 | 「ご利用時期や具体的なご状況について、この場でのご説明は差し控えます」 |
| 「事実無根です。この方は当店の客ではありません」 | 「ご記載の内容について、当店では該当する事実を確認できておりません」 |
| 「営業妨害であり法的措置を検討します」 | (公開の返信では書かず、必要なら別途手続で対応する) |
| 「同業他社による嫌がらせだと思われます」 | (根拠のない推測は書かない) |
返信の基本形は、①ご意見への謝意、②個別の事実関係には公開の場で触れない旨、③直接のご連絡先の案内、④再発防止の姿勢の4点に絞ることです。読み手として想定すべきは投稿者本人ではなく、これから来店を検討している第三者です。事実を細かく争う返信よりも、誠実で簡潔な返信のほうが好意的に受け取られます。
返信ではなく法的手続を検討すべき場面
次のような口コミは、返信で対応するよりも、削除や投稿者特定の手続を検討したほうがよい場面です。
- 事実と異なる具体的な事実を摘示しており、売上や採用に実害が出ている
- 利用実態のない第三者による投稿と疑われる(競合他社・退職者など)
- 同一人物が繰り返し複数の低評価を投稿している
- 低評価を材料に金銭や便宜を要求されている
- 従業員個人の氏名を挙げた中傷が含まれている
Googleには、ポリシーに違反する口コミを報告する窓口のほか、否定的な口コミを用いた恐喝的な行為を報告するための専用の窓口も設けられています。まずはこれらの報告を行い、それでも削除されない場合に、裁判所への削除仮処分の申立てや発信者情報開示命令の申立てへ進むのが一般的な流れです。星の数だけで本文のない口コミへの対応は星1つだけの口コミへの対処法の記事、削除の可否の全体像はGoogle口コミの削除方法・条件の記事をご参照ください。
よくある質問
事実無根の口コミに「この方は当店のお客様ではありません」と返信してもよいですか。
事実であればこの程度の記載は問題になりにくい一方、実際には来店歴がある方だった場合、こちらが虚偽の事実を公表したことになり、かえって責任を問われるおそれがあります。来店の有無を断定できないときは「ご記載の事実は確認できておりません」といった表現にとどめるのが安全です。
返信すると口コミを書いた人に通知が届きますか。
届きます。Googleビジネスプロフィールのヘルプによれば、返信が公開されるとクチコミを投稿したユーザーに通知が送られ、ユーザーは返信を読んだ後でもクチコミを変更できます。口コミが変更されると表示される日付も最新の変更日に更新されます。
返信したことで、あとから削除請求ができなくなりますか。
返信をしたこと自体で削除請求ができなくなるわけではありません。ただし、返信によって口コミが編集されて内容や表示日時が変わると、証拠として保全した内容と食い違いが生じることがあります。また、返信の内容が不適切であれば、紛争の全体像の中で事業者側に不利な事情として扱われる可能性があります。
返信は削除できますか。削除すれば法的責任もなくなりますか。
返信はビジネスプロフィールから編集・削除ができます。ただし、いったん公開された内容はスクリーンショット等で保存されていることが多く、削除によって過去の公表行為が消えるわけではありません。損害賠償責任の有無は、公開されていた間の内容と影響を踏まえて判断されます。
低評価を材料に金銭を要求されています。どうすればよいですか。
Googleは否定的なクチコミによる恐喝的な行為について専用の報告窓口を設けており、まずはそこから報告することが考えられます。金銭を支払う前に、要求のやり取りをすべて保存し、弁護士や警察への相談を検討してください。
まとめ
オーナー返信は事業者が自ら発信できる数少ない手段である一方、書き方を誤れば個人情報保護法上の問題や名誉毀損・プライバシー侵害を招き、その後の削除請求にも影響します。要点は次のとおりです。
- 返信は公開の場での発言であり、投稿者に通知が届き、口コミが書き換えられることもある
- 顧客の来店・受診の事実や属性を返信に書かない。要配慮個人情報は特に危険
- 投稿者の人格を否定する記載、根拠のない推測は書かない
- 削除請求を視野に入れるなら、返信の前に証拠を保全する
- 実害が出ている投稿は、返信ではなく削除・開示の手続で対応する
どの口コミに返信し、どれを法的手続に乗せるかの切り分けは、投稿の内容と事業への影響、証拠の状況によって変わります。弁護士に相談すれば、返信文案の確認から削除請求・投稿者特定までを一貫して検討でき、返信によって不利な立場に立たされる事態を避けられます。当事務所の費用体系は弁護士費用のページをご覧ください。横浜のタングラム法律事務所では、Googleマップ口コミ・低評価の削除に関するご相談を承っています。
Google口コミへの対応にお悩みの事業者の方へ
タングラム法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷・口コミ被害について、削除請求から発信者情報開示請求まで数多くの実績を有しております。返信すべきか、削除請求に進むべきかの判断からご相談いただけます。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。