タングラム法律事務所

不貞慰謝料を請求され証拠を見せてもらえない場合の対応|弁護士が解説

不貞慰謝料を請求され証拠を見せてもらえない場合の対応|弁護士が解説

不貞慰謝料を請求され証拠を見せてもらえない場合の対応|弁護士が解説

不貞慰謝料を請求され証拠を見せてもらえない場合の対応|弁護士が解説

不貞慰謝料を請求され証拠を見せてもらえない場合の対応|弁護士が解説

不貞行為を理由とする慰謝料請求の書面に「動かぬ証拠がある」と書かれているのに、証拠そのものは同封されていない。問い合わせても「裁判になれば出す」と言われるだけで、何を根拠に高額な金額が算出されているのかわからない——。不貞慰謝料を請求された方から、こうしたご相談を受けることは少なくありません。

証拠を確認できないまま請求された金額を認めてよいものか。そもそも相手方に証拠を見せる義務はあるのか。この記事では、交渉段階と訴訟段階で証拠がどう扱われるのかを整理したうえで、証拠を開示させる法的手段の有無とその限界、請求された側が取るべき対応の順序を、横浜の弁護士が解説します。

交渉段階では、相手方に証拠を開示する法的義務はない

結論から申し上げると、示談交渉の段階において、相手方に対して証拠の開示を強制できる法的な手段はありません。「証拠を見せてほしい」と求めること自体は自由ですが、相手方にはこれに応じる義務がなく、「裁判になったら提出する」と回答されればそれ以上の手立てはないのが原則です。

これは、訴訟外での情報開示を義務づける一般的なルールが民事には存在しないためです。刑事事件における証拠開示のような制度は、民事の慰謝料請求には用意されていません。

もっとも、だからといって請求された側が一方的に不利な立場に置かれるわけではありません。不貞行為を理由とする慰謝料請求は、民法709条・710条の不法行為に基づく損害賠償請求であり、不貞行為があったこと(およびそれによる損害)を立証する責任は、請求する側にあります。請求する側は、最終的に訴訟になれば自ら証拠を提出しなければ請求が認められないという構造の中にいるのです。

「調査で判明している」といった抽象的な表現にとどまっている場合、実際には決め手となる証拠を持っていない可能性もあります。反対に、日時・場所・宿泊先を細かく特定してきている場合は、相応の資料を持っていることがうかがわれます。書面の記載の具体性は、相手方の手持ち証拠を推し量る材料になります。

証拠の開示を求めることの意味と、伴うリスク

証拠を確認したいという気持ちは当然のものですが、開示を求める際には注意すべき点があります。

問い合わせ方によっては「承認」と評価されるおそれがある

「そんな事実はないので証拠を見せてください」という趣旨であれば問題は生じにくいのですが、「いつの分の証拠ですか」といった尋ね方をすると、不貞行為の存在を前提としたやり取りと受け取られかねません。慰謝料請求権は損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅時効にかかりますが(民法724条)、債務の存在を承認すると、そこから時効期間が新たに進行します(民法152条1項)。時効を主張し得た事案で問い合わせの文面が承認と評価されれば、その主張の余地を自ら失うことになります。

相手方に証拠を補強する時間を与えることがある

執拗に開示を迫ることで、相手方が「証拠が足りない」と気づき、追加調査や配偶者からの陳述書の取得といった補強に動くこともあります。証拠の確認は目的ではなく、請求にどう対応するかを判断するための手段です。

それでも開示を求める意味はある

他方で、請求額が相場と比べて著しく高額である場合や、そもそも交際の事実自体に心当たりがない場合には、「主張されている事実の根拠を示していただきたい」と書面で求めること自体に意味があります。相手方が具体的な根拠を示せないまま金額だけを主張し続けるのであれば、その点は減額交渉の材料になります。返答の具体的な書き方については、不貞慰謝料の請求への回答書の書き方も併せてご覧ください。

訴訟になった場合、証拠はどのように扱われるか

訴訟に移行すれば、状況は大きく変わります。原告(請求する側)は、自らの主張を基礎づける証拠を書証として提出しなければ、主張が認められないからです。

裁判所は、提出された証拠と審理の全趣旨を総合して、自由な心証により事実の有無を判断します(民事訴訟法247条。自由心証主義)。不貞行為は密室で行われるのが通常であるため、直接の証拠がなくとも、ホテルへの出入りの写真、宿泊を示す明細、継続的なやり取りの記録といった間接的な事実の積み重ねから、性的関係の存在が推認されることがあります。逆に、二人で食事をした事実や連絡を取り合っていた事実だけでは、不貞行為があったと認定されない場合も少なくありません。

段階証拠の扱い請求された側にできること
交渉(示談)開示は任意。相手方に義務はない書面で根拠の提示を求める/請求額の妥当性を争う
訴訟(第一審)原告が書証として提出する必要がある提出された証拠の証拠力を争う/反証を出す
訴訟(証拠調べ)当事者尋問等で事実関係が確認される陳述書・尋問で自らの認識を述べる

相手方から証拠を引き出す法的な制度と、その限界

民事訴訟法には、相手方が所持する資料にアプローチするための制度がいくつか用意されています。もっとも、不貞慰謝料の事案で請求された側がこれらを使う場面は限られます。

提訴前照会(民事訴訟法132条の2・132条の3)

訴えを提起しようとする者が被告となるべき者に書面で提訴予告通知をした場合、その日から4か月以内に限り、主張・立証の準備に必要であることが明らかな事項について書面で照会ができます(民事訴訟法132条の2第1項)。予告通知を受けた側も、書面で返答をすれば同様に照会ができます(同法132条の3第1項)。ただし、回答しないことへの直接の制裁はなく、相手方が提訴予告通知の形式をとっていなければそもそも使えません。

文書提出命令(民事訴訟法220条・224条)

訴訟係属後は、文書の所持者に提出を命じるよう裁判所に申し立てることができます(民事訴訟法220条)。当事者が提出命令に従わない場合、裁判所はその文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができます(同法224条1項)。もっとも、不貞慰謝料の訴訟では原告が自ら証拠を提出しなければ請求が認められない立場にあるため、被告側がこの制度を使う場面は多くありません。実務上は、提出された証拠の信用性を争う方が中心になります。

弁護士会照会(弁護士法23条の2)

受任した弁護士は、所属する弁護士会を通じて公私の団体に必要な事項の報告を求めることができますが、これは団体に対する照会制度であり、相手方個人が持つ写真やメッセージの記録を取り寄せる手段としては機能しません。

証拠を見せてもらえないときに、してはいけないこと

  • 請求を無視・放置する——訴訟を提起されて欠席すれば、擬制自白により請求どおりの判決が出るおそれがあります。
  • 証拠がないと決めつけて強い否認をする——後に決定的な証拠が提出されると、不誠実な対応と評価され、慰謝料額の算定で不利に働くことがあります。
  • その場しのぎで念書や謝罪文を書く——不貞行為を認める書面はそのまま証拠になり、支払を約束する内容であれば時効の更新事由としての承認にも該当し得ます。
  • 相手方本人と直接会って話す——録音されているのが通常であり、会話の一部を切り取られて証拠化されるおそれがあります。
  • 証拠を消去する・関係者に口裏合わせを依頼する——発覚した場合、事実認定において極めて不利に働きます。

請求を受けたときに認めるべきかどうかの判断については、不貞慰謝料を請求されたら認めるべき?認める前の注意点で詳しく解説しています。そもそも事実関係に心当たりがない場合には、請求されたが身に覚えがない場合の対応もご参照ください。

請求された側が取るべき対応の順序

証拠が見えない状況で慌てて動くと、かえって不利な結果を招きます。次の順序で整理することをおすすめします。

  1. 書面の内容を正確に把握する——誰が、誰に対し、いつからいつまでの、どのような事実を主張しているのか。請求額と回答期限はいつか。
  2. ご自身の認識と突き合わせる——争いのない部分と争う部分を分けます。全面的に争うのか、事実は認めたうえで金額を争うのかで方針が大きく変わります。
  3. 時効の成否を確認する——不貞行為から長期間が経過している場合、消滅時効を主張できる可能性があります(民法724条)。この検討を経ずに承認と評価される言動をしないことが重要です。
  4. 請求額の妥当性を検討する——裁判例の傾向として、不貞慰謝料は婚姻期間、不貞行為の期間・態様、婚姻関係が破綻に至ったかどうか、子の有無などの事情により幅がありますが、数十万円から300万円程度の範囲で認定されることが多いとされています。請求書に記載された金額が、そのまま裁判で認められる金額ではありません。
  5. 返答の方法と内容を決める——期限内に、書面で、認否を明確にしすぎない形で返答するのが基本です。

不貞慰謝料をめぐる交渉全般の考え方や当事務所の取扱いについては、不貞慰謝料請求の取扱分野のページで詳しくご案内しています。なお、交際の相手方が既婚者であることを知らなかったケースや、夜職・パパ活を背景とするケースについては、夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応の特設ページもご用意しています。

よくある質問

不貞慰謝料を請求された側は、相手に証拠の開示を請求できますか。

交渉の段階では、相手方に証拠を開示させる法的な手段はありません。求めること自体は自由ですが、相手方に応じる義務はなく、拒否されることもあります。もっとも、請求する側は訴訟で立証責任を負うため、請求額に見合う証拠があれば任意に一部を示してくることもあります。

証拠を見せてもらえないまま、示談に応じてもよいのでしょうか。

相手方が主張する事実の範囲がご自身の認識と一致しているか確認しないまま示談すると、実際より重い事実を前提とした金額で合意してしまうおそれがあります。他方で、早期に清算条項付きの示談を成立させることには紛争を終わらせる利点もあります。証拠の有無だけでなく、請求額の妥当性と解決の早さを併せて検討することが重要です。

裁判になれば、相手は必ず証拠を出さなければならないのですか。

不法行為に基づく損害賠償請求では、不貞行為があったことの立証責任は請求する側にあります。請求する側は自ら証拠を提出しなければ請求が認められないため、訴訟になれば証拠は明らかになるのが通常です。ただし、提出するかどうかを決めるのはあくまで請求する側です。

証拠がないと言われたら、無視してよいですか。

無視することはおすすめできません。請求を放置すると、訴訟を提起され、欠席のまま請求どおりの判決が出るおそれがあります。証拠の有無にかかわらず、受領した書面の内容を確認し、期限までに何らかの返答をすることが適切です。

まとめ

不貞慰謝料を請求されたにもかかわらず証拠を見せてもらえないという状況は、決して珍しいものではありません。交渉段階で開示を強制する制度がない以上、相手方の手持ち証拠が見えないまま判断を迫られること自体は避けがたいといえます。

しかし、立証責任は請求する側にあり、請求書に書かれた金額がそのまま裁判で認められるわけでもありません。重要なのは、証拠を見ることそれ自体ではなく、主張されている事実の範囲を特定し、時効の成否を確認し、請求額の妥当性を検討したうえで、承認と評価されない形で返答することです。

弁護士が代理人として就けば、以後の連絡の窓口を弁護士に一本化でき、直接のやり取りで不用意な言質を与える事態を避けられます。また、相手方の主張の具体性や請求額の水準から、手持ち証拠の程度や訴訟になった場合の見通しを評価し、交渉方針を立てることが可能になります。判断に迷われている方は、期限までに余裕をもって横浜の弁護士にご相談ください。

不貞慰謝料を請求され、対応にお困りの方へ

タングラム法律事務所では、不貞慰謝料を請求された側の対応(証拠の評価・減額交渉・示談書の検討・訴訟対応)について、多数のご相談に対応しております。証拠が示されないまま請求を受けている段階でも、方針を立てることは可能です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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