タングラム法律事務所

誹謗中傷の投稿を削除すれば開示請求されない?投稿者側の注意点

誹謗中傷の投稿を削除すれば開示請求されない?投稿者側の注意点

誹謗中傷の投稿を削除すれば開示請求されない?投稿者側の注意点

誹謗中傷の投稿を削除すれば開示請求されない?投稿者側の注意点

誹謗中傷の投稿を削除すれば開示請求されない?投稿者側の注意点

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月5日 最終更新日:2026年10月5日

SNSや掲示板に感情的な書き込みをしてしまい、後から「これは誹謗中傷にあたるのではないか」「相手に訴えられるのではないか」と不安になる方は少なくありません。そのとき多くの方が最初に考えるのが、「今のうちに投稿を消してしまえば、開示請求されずに済むのでは」ということです。

この記事では、投稿を削除した場合に何が残り、何が変わるのかを整理したうえで、削除後に開示請求を受ける可能性がある期間の目安、削除するときに注意したいこと、そして意見照会書が届いたときの対応を、投稿者側の視点から横浜の弁護士が解説します。

結論として、投稿を削除しても開示請求の対象から外れるわけではありません。被害者が保存した証拠や、サイト運営者・プロバイダの通信記録(ログ)が残っていれば、削除後でも開示請求を受け、意見照会書が届く可能性があります。削除は被害の拡大を止める意味では有益ですが、削除の仕方や削除後の行動を誤ると、かえって不利になるおそれがあります。

投稿を削除しても開示請求されなくなるわけではない理由

発信者情報開示請求は、権利を侵害されたとする人が、サイト運営者やプロバイダに対して投稿者の情報の開示を求める手続です(情報流通プラットフォーム対処法5条1項)。投稿を削除しても、この手続に必要な材料が消えるとは限りません。

削除後も残り得るもの内容
被害者側の証拠投稿のスクリーンショット、URL、投稿日時の記録、ウェブ魚拓などのアーカイブ
事業者側の記録サイト運営者が保有するIPアドレスやタイムスタンプ、アカウントの登録情報、プロバイダの接続記録
法的な責任名誉毀損などの不法行為は投稿した時点で成立し得るため、削除によって過去にさかのぼって消えるわけではない

被害を受けた人は、投稿を見つけた時点で証拠を保存していることが多く、削除後に「消えたから請求できない」という状態になるとは限りません。また、名誉毀損やプライバシー侵害による損害賠償責任は、投稿によって損害が生じた時点で問題となるため、後から削除しても責任そのものがなくなるわけではないと考えられています。

削除後、開示請求を受ける可能性がある期間の目安

「いつまで不安な日々が続くのか」は、投稿者にとって切実な問題です。主な期間の目安は次のとおりです。

項目期間の目安根拠・備考
プロバイダの通信記録(ログ)一般に3か月〜6か月程度といわれる事業者により異なる。開示命令の手続中は消去禁止命令(情報流通プラットフォーム対処法16条1項)により保存されることがある
損害賠償請求(民事)損害及び加害者を知った時から3年、投稿時から20年民法724条
刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)犯人を知った日から6か月親告罪(刑法232条)。告訴期間は刑事訴訟法235条

ログの保存期間は事業者ごとに異なり、外部から確認することはできません。被害者が早い段階で裁判所に発信者情報開示命令を申し立てた場合には、提供命令(同法15条)や消去禁止命令によって記録が保全されるため、投稿から数か月以上たってから意見照会書が届くこともあります。ログの保存期間について詳しくは「ネット誹謗中傷のログはいつ消える?プロバイダのログ保存期間と消去禁止命令」をご覧ください。

投稿を削除することの意味

削除によって開示請求を確実に避けられるわけではありませんが、削除にはそれ自体に意味があります。

  • 被害の拡大を止められる:投稿が公開されている限り、閲覧や拡散によって被害が広がり続けます。早期に削除することで、これ以上の損害の発生を防ぐことができます。
  • 交渉や裁判で考慮される可能性がある:自主的に削除したことは、反省の姿勢を示す事情として、示談交渉や慰謝料額の判断で考慮される可能性があります。
  • トラブルの長期化を防げる:投稿が残っていると、被害者が削除請求を別途行う必要が生じ、紛争が拡大しやすくなります。

つまり、削除は「特定を逃れるための手段」ではなく、「被害を広げないための行動」と捉えるのが適切です。

投稿を削除するときに注意したいこと

削除前に投稿内容と日時を自分でも控えておく

後に意見照会書が届いた場合、どの投稿が問題とされているのか、どのような文脈で書いたのか、内容に根拠があったのかを説明する必要が出てきます。削除してしまうと自分でも内容を確認できなくなるため、削除前に投稿の文面、日時、前後のやり取りを控えておくことが大切です。

アカウントごと削除する・関連投稿を一斉に消すことは避ける

関係する投稿をまとめて消したり、アカウントごと削除したりすると、後の交渉や裁判で「証拠を隠そうとした」と受け取られるおそれがあります。被害者側に証拠が残っていれば、こうした行動はかえって不利な事情として評価されかねません。

被害者に直接連絡しない・追加の投稿をしない

不安から被害者に直接謝罪のメッセージを送ったり、弁明の投稿をしたりすると、相手の感情を刺激し、新たな権利侵害や圧力と受け取られる場合があります。謝罪や話合いを考える場合は、弁護士を通じて行うほうが安全です。

意見照会書が届いたときの対応

開示請求を受けたプロバイダは、原則として投稿者(発信者)に開示に同意するかどうかの意見を聴かなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。そのために送られてくるのが意見照会書で、2週間程度の回答期限が設けられるのが一般的です。

投稿を削除済みであることは、開示に同意しない理由にはならないと考えられます。開示の可否は、投稿の時点で権利侵害があったかどうかなどで判断されるためです。

回答では、開示に同意するか、同意しない場合はその理由(権利侵害が明らかでないこと、投稿に公共性・公益目的・真実性があることなど)を具体的に記載します。回答の内容は、その後の裁判手続や示談交渉にも影響し得るため、慎重な検討が必要です。意見照会書を放置した場合のリスクは「意見照会書を無視・放置するとどうなる?」で、開示後の流れは「開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れ」で解説しています。

当事務所では、開示請求を受けた投稿者側からのご相談にも対応しています。回答書の作成や開示後の交渉については、意見照会書が届いた方向けの意見照会対応のページもご覧ください。

よくある質問

投稿を削除すれば、意見照会書は届かなくなりますか?

削除しただけで開示請求の手続が止まるわけではありません。被害者が投稿のスクリーンショットやURLを保存しており、サイト運営者やプロバイダに通信記録(ログ)が残っていれば、削除後でも開示請求が行われ、意見照会書が届く可能性があります。

投稿を削除済みであることは、開示に同意しない理由になりますか?

削除済みであること自体は、開示に同意しない理由にはならないと考えられます。開示の可否は、投稿の時点で権利侵害があったかどうかなどで判断されるためです。不同意の理由としては、権利侵害が明らかでないことなどを具体的に述べる必要があります。

アカウントごと削除したほうがよいですか?

おすすめしません。アカウントを削除しても被害者側の証拠や事業者の記録が残っている場合があり、関係する投稿をまとめて消す行為は、後の交渉や裁判で証拠を隠そうとしたと受け取られるおそれがあります。削除の前に、投稿内容と日時を自分でも控えておくことが大切です。

被害者に直接連絡して謝罪したほうがよいですか?

慎重に考える必要があります。突然の連絡が相手の感情を刺激したり、圧力と受け取られたりして、かえって事態が悪化することがあります。謝罪や示談を考える場合は、弁護士を通じて行うほうが安全です。

まとめ

誹謗中傷にあたるかもしれない投稿を削除しても、被害者側の証拠や事業者の記録が残っていれば、開示請求を受ける可能性はなくなりません。一方で、削除は被害の拡大を止め、反省の姿勢を示す意味を持ちます。大切なのは、内容を控えたうえで削除し、証拠隠しと受け取られる行動や被害者への直接の接触を避けることです。

意見照会書が届いた段階で弁護士に相談すれば、回答書の内容、開示後の示談交渉の見通しまで含めて検討できます。不安を一人で抱え込まず、早めに弁護士へご相談ください。

投稿の削除や意見照会書の対応でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、発信者情報開示請求・意見照会への対応について、投稿者側・被害者側の双方で豊富な実績を有しております。横浜を拠点に、回答書の作成から開示後の示談交渉まで一貫してサポートいたします。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求・削除請求について見る

意見照会書や損害賠償請求の通知が届いた方へのご案内

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。