タングラム法律事務所

音楽ファイルのトレント共有と著作隣接権|レコード会社からの意見照会

音楽ファイルのトレント共有と著作隣接権|レコード会社からの意見照会

音楽ファイルのトレント共有と著作隣接権|レコード会社からの意見照会

音楽ファイルのトレント共有と著作隣接権|レコード会社からの意見照会

音楽ファイルのトレント共有と著作隣接権|レコード会社からの意見照会

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月15日 最終更新日:2026年10月15日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書を開いてみたら、対象は映画やアニメではなく音楽のアルバムや楽曲のファイルで、照会者はレコード会社だった――。「作曲した人でもないのに、なぜレコード会社が権利を主張するのか」「音楽は聴いていただけなのに」と戸惑う方は少なくありません。

この記事では、音楽ファイルに関わる権利の種類、とくに作詞・作曲の著作権とは別に認められている「著作隣接権」(レコード製作者・実演家の権利)の仕組みと、BitTorrentでの共有がその侵害とされる理由、開示が認められた裁判例、保護期間の考え方、照会書を受け取ったときの確認点を、発信者側の立場から解説します。

結論として、市販の音楽の録音物には、作詞・作曲の著作権のほかに、音を最初に録音したレコード製作者や、歌唱・演奏をした実演家の著作隣接権が認められています。これらの権利には「送信可能化権」が含まれるため、BitTorrentで音楽ファイルを他の利用者が取得できる状態に置くと、レコード会社などから開示請求を受ける可能性があります。照会書に記載された権利の種類・発信日時・ファイルの内容を確認し、事案に即して回答方針を検討することが大切です。

音楽ファイルには複数の権利が重なっている

1曲の音楽ファイルには、性質の異なる複数の権利が同時に存在しているのが通常です。

権利の種類権利を持つ人主な根拠条文
著作権(公衆送信権。送信可能化を含む)作詞者・作曲者など(管理事業者に管理を委ねていることもある)著作権法23条1項
実演家の著作隣接権(送信可能化権)歌手・演奏家など実演を行った人著作権法92条の2
レコード製作者の著作隣接権(送信可能化権)音を最初に固定(録音)した者。市販音源ではレコード会社であることが多い著作権法96条の2

著作権法は、「レコード」を、音を物に固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く)と定義し(2条1項5号)、「レコード製作者」を、レコードに固定されている音を最初に固定した者と定めています(同項6号)。作品を創作した人ではなく、録音という形で音源を作り出した人にも独自の権利が与えられている点が、音楽の大きな特徴です。

そのため、同じ楽曲のファイルについて、作詞・作曲の権利者とは別に、レコード会社が自らの権利に基づいて開示請求をすることがあり得ます。なお、実演家の権利は、契約によってレコード会社等に集約されている場合もあります。

レコード製作者の「送信可能化権」とBitTorrent

著作権法96条の2は、「レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する」と定めています。実演家についても、92条の2第1項で同様の送信可能化権が認められています。送信可能化とは、インターネットに接続された機器にデータを記録するなどして、公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にすることをいいます(2条1項9号の5)。

BitTorrentのクライアントソフトは、通常、ダウンロード中のデータの断片(ピース)を、同じファイルを求める他の利用者にも送信する仕組みになっています。本人が「聴くためにダウンロードしただけ」のつもりでも、音楽ファイルを他の利用者が取得できる状態に置いていたとして、送信可能化に当たると評価される可能性があります。この点は「ダウンロードしただけ」は通用するか|トレント開示請求と送信可能化権で詳しく解説しています。

また、私的使用のための複製(30条1項)の考え方は、著作権法102条1項により著作隣接権にも準用されています。自分で聴くための複製は一定の範囲で認められ得ますが、他の利用者への送信が問題となる場面では、この例外による保護は期待できません。

音楽を理由とする開示請求は実際に認められているか

裁判例では、レコード会社がレコード製作者としての送信可能化権の侵害を理由に、BitTorrentの利用者の発信者情報開示を求めた事案で、開示を認めたものがあります。東京地方裁判所令和6年1月30日判決(令和5年(ワ)第70368号)は、発信者が音楽のレコードのファイルを「他の不特定のビットトレントの利用者からの要求があればいつでもこれを送信し得る状態に置いていた」と認定し、送信可能化権の侵害は明らかであるとして、氏名・住所・電話番号・電子メールアドレスの開示を命じました。同判決では、権利者側の調査システムによる調査結果の信用性を争う主張も退けられています。

また、報道によれば、音楽の業界団体である一般社団法人日本レコード協会は、2025年11月と2026年3月に、会員レコード会社がBitTorrentで音楽ファイルをアップロードした利用者の発信者情報について開示を命じる判決を得たこと、開示された情報をもとに利用者と協議し、一部の利用者とは損害賠償金の支払い等で合意したことを公表しています。音楽を対象とする請求が、継続的に行われていることがうかがえます。

照会書に記載された請求者が本当にその音源の権利を持っているのかは、確認すべき事項の一つです。権利者性の確認の考え方は「トレントの請求者は本当に著作権者か|意見照会と権利者性の確認」で整理しています。

アニメ・映画の動画とは何が違うのか

レコードの定義からは、「音を専ら影像とともに再生することを目的とするもの」が除かれています(2条1項5号)。映画やアニメの動画ファイルに含まれる音声は、通常、映像と一体のものとして映画の著作物の問題として扱われ、レコード製作者の権利の対象とは区別されます。

これに対し、音楽アルバムや楽曲の音声ファイルは、レコード製作者・実演家の著作隣接権と、作詞・作曲の著作権が重なり合う対象です。照会書の「権利の種類」や「侵害された権利」の欄に、著作権ではなく「送信可能化権(レコード製作者の権利)」などと書かれているのは、このためです。照会書のどの欄に何が書かれているかを読み分けることが、回答の検討の出発点になります。

古い音源なら問題にならないのか――保護期間の考え方

レコード製作者の権利は、音を最初に固定した時に始まり、原則として、そのレコードの発行が行われた年の翌年から起算して70年を経過した時に満了します(101条1項・2項)。実演家の権利は、実演が行われた年の翌年から起算して70年です。

文化庁の解説によれば、実演家・レコード製作者の権利の保護期間は、2018年12月30日施行の法改正で50年から70年に延長されました。ただし、一度消滅した権利を復活させない原則がとられており、施行日の前日(2018年12月29日)までに保護期間が満了していたものは延長されません。

もっとも、音源の権利が切れていても、作詞・作曲の著作権は別に存続していることがあります。また、海外の音源も、条約に基づき日本で保護されるものが広く定められています(8条)。発行年が古いというだけで、問題がないと判断するのは危険です。

アルバム単位の共有と、複数の権利者からの照会

音楽はアルバム単位でファイルがまとめられていることが多く、1つのファイルに複数の楽曲・複数のレコードが含まれていることがあります。また、前述のとおり、同じ音源について著作権者・実演家・レコード製作者の権利が重なるため、異なる権利者から、あるいは異なる時期に、別々の照会が届く可能性もあります。照会が複数届いた場合の考え方は「トレントの意見照会書が複数届いたら|作品ごと・回数ごとの対応」をご覧ください。

著作権法114条の損害額の推定等の規定は、著作隣接権者にも適用されます。開示後に損害賠償を請求される場面では、対象となった楽曲・レコードの数、共有していた期間、利用の態様などが考慮されることになり、一律の金額があるわけではありません。なお、著作隣接権の侵害も、著作権の侵害と同様に刑事罰の対象として規定されています(119条1項)。

音楽の意見照会書が届いたときの確認点

音楽を対象とする照会書を受け取ったら、まず次の点を確認してください。

  • 照会者(請求者)と、主張されている権利の種類(著作権か、レコード製作者・実演家の権利か)
  • 対象のファイル名・ハッシュ値と、記載された楽曲・アルバムの内容
  • 発信日時・IPアドレス・ポート番号と、その時間帯に回線を利用できた人
  • 回答期限と、回答書の提出方法

「音楽なら映画より軽いはず」「1曲だけだから大丈夫」といった思い込みで、回答書に利用の事実を認める記載をしてしまうと、後の交渉で不利になるおそれがあります。回答書に何を書き、何を書かないかは、事案ごとの判断が必要です。横浜の当事務所の考え方は意見照会対応のページでもご紹介しています。BitTorrentの意見照会書への具体的な対応の流れや弁護士費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページでご案内しています。

よくある質問

音楽ファイルのトレント共有で、作曲者ではなくレコード会社から意見照会が来るのはなぜですか。

音楽の録音物(レコード)には、作詞・作曲の著作権とは別に、音を最初に固定したレコード製作者の著作隣接権が認められており、その中に送信可能化権(著作権法96条の2)が含まれているためです。BitTorrentで音楽ファイルを他の利用者が取得できる状態に置くと、この権利の侵害を理由に開示請求がされることがあります。

古いCDの音源なら、著作隣接権は切れていませんか。

レコード製作者の権利は、原則としてレコードの発行が行われた年の翌年から起算して70年を経過するまで存続します(著作権法101条2項)。2018年12月30日施行の改正で50年から70年に延長されましたが、同年12月29日までに消滅していた権利は復活しません。ただし、音源の権利が切れていても、作詞・作曲の著作権が存続していることがあるため、発行年だけで問題がないとは判断できません。

共有していたのが1曲だけでも、開示は認められますか。

開示が認められるかどうかは、曲数ではなく、権利侵害が明らかであることなどの要件を満たすかで判断されます。1曲であっても、他の利用者が取得できる状態に置いていたと認められれば、開示が認められる可能性があります。曲数や期間は、開示後の損害賠償の場面で考慮される要素の一つです。

音楽を聴くためにダウンロードしただけのつもりでも、責任を問われますか。

問われる可能性があります。BitTorrentは、通常、ダウンロード中のデータの断片を他の利用者にも送信する仕組みのため、本人の意図にかかわらず送信可能化に当たると評価されることがあります。照会書の発信日時やファイルの内容を確認したうえで、回答の方針を検討することが大切です。

まとめ

音楽ファイルには、作詞・作曲の著作権に加えて、レコード製作者や実演家の著作隣接権が重なっており、これらには送信可能化権が含まれます。BitTorrentでの共有は、レコード会社がレコード製作者として開示請求をする根拠となり得るもので、実際に開示を認めた裁判例もあります。保護期間や権利者性、対象ファイルの内容など、確認すべき点は映像作品の場合と異なる部分もあります。

「音楽だから」「1曲だけだから」と軽く考えず、照会書に記載された権利の種類と事実を一つずつ確認したうえで、回答の方針を決めることが大切です。横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。

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音楽ファイルの意見照会書が届いて戸惑っている方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権・著作隣接権の侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで数多く取り扱っております。照会書と添付資料を確認し、主張されている権利の種類や事情を伺ったうえで、回答の方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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