タングラム法律事務所

トレントのまとめファイルで意見照会書|パック内の一作品だけが対象なら

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トレントのまとめファイルで意見照会書|パック内の一作品だけが対象なら

トレントのまとめファイルで意見照会書|パック内の一作品だけが対象なら

トレントのまとめファイルで意見照会書|パック内の一作品だけが対象なら

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月29日 最終更新日:2026年10月29日

複数の作品がひとまとめになったトレント(いわゆる「まとめファイル」「パック」)をダウンロードした覚えはあるものの、届いた意見照会書に書かれていたのは、その中の一作品だけだった——。「その作品は見ていない」「何十本も入っていたのに、なぜこれだけなのか」「残りの作品についても、これから照会が来るのか」と、戸惑いを覚える方は少なくありません。

この記事では、まとめファイルの仕組みと意見照会書で特定される情報の関係、「その作品は選んでいない」という主張がどこまで意味を持つか、別の作品について追加の照会が来る可能性、そして回答書と示談で注意すべき点を、BitTorrentの発信者側の対応を扱う横浜の弁護士の立場から整理します。

結論から申し上げると、まとめファイルの一部の作品についての照会であっても、意見照会への対応の基本は通常の場合と変わりません。ただし、パック内の他の作品については権利者ごとに別の照会・請求が来る可能性があり、照会された作品を選択していなかったという事情は主張の材料になり得るものの、それだけで開示が否定されるとは限りません。どの作品が、どの権利者から、どの範囲で問題とされているのかを最初に正確に把握することが重要です。

1. まとめファイル(パック)とは——一つのトレントに複数のファイル

BitTorrentの仕様(BEP 3)では、一つのトレントが単一のファイルを表す場合と、ディレクトリ構造を持つ複数のファイルの集合を表す場合とが定められています。複数ファイルの場合、ファイルは並び順に連結された一つのデータとして扱われ、それが一定の大きさの「ピース」に分割されて送受信されます。

この仕組みから、次の2点が導かれます。

  • ピースはファイルの境界をまたぐことがある——連結されたデータを機械的に区切るため、一つのピースに、前のファイルの末尾と次のファイルの先頭が含まれることがあります
  • トレント全体を識別するハッシュ値は一つ——いわゆるinfo hashは、トレントのメタ情報(info)全体から計算されます。そのため、パック内の個々の作品ではなく、パック全体が一つのハッシュ値で識別されます

意見照会書や添付資料にハッシュ値とファイル名が記載されている場合、ハッシュ値がパック全体を指し、ファイル名や作品名の欄で問題とされる作品が特定されている、という構造になっていることがあります。添付資料の各欄の読み方は、意見照会書の添付資料(ハッシュ値・IPアドレス)の読み方を解説した記事で整理しています。

2. なぜパック内の一作品だけが照会されるのか

まとめファイルには、制作会社や権利者が異なる作品が混在していることが多くあります。発信者情報開示の請求は、権利を侵害されたとする者がそれぞれ行うものです(情報流通プラットフォーム対処法5条1項)。そのため、パックに含まれる作品のうち、開示を請求した権利者の作品だけが照会の対象として記載されるのが通常です。

状況考えられる意味
パック内の1作品だけが記載されているその作品の権利者が開示を請求している。他の作品の権利者は、現時点では請求していないか、別の手続で進めている可能性
同じ権利者の作品が複数記載されている同一の権利者がパック内の自社作品をまとめて対象としている可能性
同じ日時・同じハッシュ値で別の照会書が届く別の権利者が、同じパック内の別の作品について請求している可能性

照会書が一通だけだからといって、パック内の他の作品について問題が生じないとは限りません。複数の照会が届いた場合の整理の仕方は、意見照会書が複数届いた場合の作品ごと・回数ごとの対応で解説しています。

3. 「その作品は選んでいない・見ていない」という主張の意味と限界

多くのBitTorrentクライアントには、パック内のファイルごとに「ダウンロードしない」を選べる機能があります。照会された作品をダウンロード対象から外していたのであれば、その作品のデータを他者に提供できる状態になかった、という主張の材料にはなり得ます。

もっとも、次の点に注意が必要です。

  • ピースの境界の問題——前述のとおりピースはファイルをまたぐため、選択しなかったファイルの一部のデータが、隣のファイルの取得に伴って手元に残ることがあります
  • 裏付けの問題——当時の設定を示す画面や記録は、時間が経つと残っていないことが多く、記憶だけに基づく説明になりがちです
  • 「視聴していない」は別の話——著作権法23条1項は、自動公衆送信について「送信可能化」を含む公衆送信権を定めています。問題とされるのは他者に送信し得る状態にしたかどうかであり、作品を再生・視聴したかどうかではありません

ファイルの一部(ピース)しか送信していない場合に侵害が成立するかという点は、ピース(断片)の送信と著作権侵害について裁判例を交えて解説した記事で詳しく扱っています。また、意見照会書が届いた後に慌ててクライアントやデータを削除すると、当時の設定を確認する手がかりまで失われるおそれがあります。

「選択していなかった」という事情は、事実であれば重要な主張になり得ます。ただし、回答書に書いた内容は原則として権利者側にも伝わり、後の交渉や訴訟で前提とされる可能性があります。事実関係と裏付けの有無を整理してから、述べ方を検討してください。

4. 損害額はパックの価格で決まるのか

「パックは安く出回っていたのだから、損害も小さいはずだ」と考える方もいます。しかし、著作権法114条は、権利者が受けた損害の額を推定・算定する方法を定めており、たとえば同条3項は、権利の行使について受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できるとしています。権利者側の主張は、通常、作品ごと・権利者ごとに組み立てられます。

そのため、パック全体の価格や容量がそのまま基準になるわけではなく、作品の性質、利用の態様、利用していた期間、対象となる作品数などの要素を個別に検討することになります。請求を受けた段階では、その根拠を作品ごとに確認することが出発点になります。

5. 回答書・示談で注意すべきこと

回答書では「照会された作品」に即して述べる

意見照会書は、特定の権利者が、特定の作品・日時・IPアドレスについて開示を求めていることを前提にしています。回答書では、照会の対象を正確に把握したうえで、その作品との関係で事実を述べることが基本です。パック内の他の作品について自分から言及すると、照会の範囲を超えて不利な事情を伝えることになりかねません。

示談では対象作品と清算の範囲を確認する

開示後に示談をする場合も、示談の効力は原則としてその当事者と対象に及ぶものです。示談書で、対象作品がどのように特定されているか、清算条項がどこまでの範囲を定めているかを確認する必要があります。パック内の別の権利者の作品は、別の問題として残る可能性があります。

どの作品について、どこまでを主張し、どこから先は述べないかという判断は、個別の事情に大きく左右されます。意見照会の段階での対応の全体像は、当事務所の意見照会対応(発信者側)のページでも整理しています。BitTorrentの意見照会書が届いた方向けの対応内容や費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページでご案内しています。

6. よくある質問

Q1. まとめファイルの中の1作品しか照会されていないのに、他の作品についても請求されることはありますか。

あり得ます。まとめファイルに複数の権利者の作品が含まれていれば、それぞれの権利者が別々に発信者情報開示を求めることができるためです。ただし、プロバイダのログの保存期間には限りがあるため、どの作品について照会が来るかは事案によって異なります。

Q2. パック内のその作品を「ダウンロードしない」に設定していた場合、開示に同意しない理由になりますか。

理由になり得ますが、それだけで開示が否定されるとは限りません。ピースはファイルの境界をまたいで構成されるため、選択しなかったファイルのデータの一部が手元に残ることがあり、また設定を裏付ける資料が残っていないことも多いからです。具体的な事情と資料を整理したうえで、回答書での述べ方を検討することが大切です。

Q3. パックの価格が安ければ、損害額も小さくなりますか。

一概にはいえません。損害額は作品ごと・権利者ごとに、作品の性質や利用の態様・期間などを踏まえて主張されるのが一般的で、パック全体の価格がそのまま基準になるわけではありません。請求額の根拠は個別に確認する必要があります。

Q4. 照会された1作品について示談すれば、パック内の他の作品も解決しますか。

示談の効力は、原則としてその示談の当事者と対象に限られます。別の権利者の作品は別の問題として残るため、示談書で対象作品と清算の範囲がどう定められているかを確認することが重要です。

7. まとめ

  • まとめファイル(パック)は、複数のファイルを連結して一つのトレントとしたもので、ハッシュ値はパック全体を指す
  • 照会書に記載されるのは、通常、開示を請求した権利者の作品だけであり、パック内の他の作品について別の照会が来る可能性がある
  • 「その作品は選んでいない」という事情は主張の材料になり得るが、ピースの境界や裏付けの問題があり、それだけで開示が否定されるとは限らない
  • 損害額は作品ごと・権利者ごとに主張されるのが通常で、パックの価格がそのまま基準になるわけではない
  • 回答書は照会された作品に即して述べ、示談では対象作品と清算の範囲を確認する

まとめファイルの事案は、照会された作品・照会されていない作品・今後照会され得る作品を分けて考える必要があります。横浜の弁護士である当事務所にご相談いただければ、照会書と添付資料から問題とされている範囲を確認し、回答書の内容と今後の見通しを具体的に検討できます。

BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちら

まとめファイル(パック)の一作品について意見照会書が届いた方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)の著作権侵害に係る発信者側の対応について、意見照会の段階から開示後の示談交渉まで数多くのご依頼をお受けしております。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)の初回相談を無料で承っております(その他の分野のご相談は対象外です)。回答期限がございますので、お早めにご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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