タングラム法律事務所

遺留分侵害額請求と相続税|更正の請求・修正申告の期限を弁護士が解説

遺留分侵害額請求と相続税|更正の請求・修正申告の期限を弁護士が解説

遺留分侵害額請求と相続税|更正の請求・修正申告の期限を弁護士が解説

遺留分侵害額請求と相続税|更正の請求・修正申告の期限を弁護士が解説

遺留分侵害額請求と相続税|更正の請求・修正申告の期限を弁護士が解説

「遺留分侵害額として500万円を支払うことで話がまとまったが、自分はすでに相続税を納めている。払い過ぎた分はどうなるのだろう」「逆に受け取った側は、あらためて相続税を納めなければならないのか」——遺留分をめぐる交渉がようやく決着したあとで、こうした税金の疑問に直面する方は少なくありません。遺留分の話し合いは長期化しやすく、決着したときには相続税の申告をとうに済ませているのが通常だからです。

遺留分侵害額が確定すると、済ませた相続税の申告内容と実際の取得額がずれます。このずれを精算する仕組みが、支払った側の「更正の請求」と、受け取った側の「期限後申告・修正申告」です。更正の請求には期限があり、放置すると払い過ぎた相続税が戻らないおそれがあります。この記事では、精算手続と期限、不動産で支払う場合の落とし穴、税金を踏まえた交渉の進め方を、横浜の弁護士が解説します。

遺留分の話し合いは相続税の申告期限に間に合わないのが通常

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法27条1項)。他方で、遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が相続の開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年という期間内に行使すれば足ります(民法1048条)。そのうえで金額の交渉、資料の開示、調停や訴訟へと進むため、10か月以内にすべてが決着するケースはむしろ例外です。

そのため実務では、まず遺言等に基づく現状の取得内容で期限内に申告・納付を済ませ、遺留分侵害額が確定した段階であらためて精算する、という二段構えになります。申告期限が近づいているのに遺産分割自体がまとまらない場合の対応については、遺産分割がまとまらないまま相続税の申告期限を迎える場合の未分割申告の解説もあわせてご覧ください。

遺留分をめぐる交渉が続いていても、相続税の申告期限が延びるわけではありません。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税といった負担が生じ得ますので、「話がまとまってから申告すればよい」と考えるのは危険です。

遺留分侵害額が確定したときの相続税の精算

2019年(令和元年)7月1日以後に開始した相続では、遺留分の請求は「遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する」権利とされています(民法1046条1項)。つまり、遺留分の解決は原則として金銭のやりとりです。この金銭の額が確定すると、相続税の課税価格にも影響が及びます。

支払った側(受遺者・受贈者)は「更正の請求」ができる

遺言などで多くの財産を取得し、そのうえで遺留分侵害額を支払った側は、結果として当初の申告よりも取得額が減ることになります。この場合、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことにより課税価格や税額が過大となったとして、更正の請求をすることができます(相続税法32条1項)。

重要なのは期限です。国税庁の手続案内「B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続」によれば、こうした後発的な事由による更正の請求は、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があるとされています。自動的に還付されるわけではなく、期限を過ぎれば払い過ぎた相続税を取り戻せなくなるおそれがあります。

受け取った側(遺留分権利者)は期限後申告・修正申告を検討する

他方、遺留分侵害額として金銭を受け取った側は、その分だけ取得額が増えます。この場合、期限後申告書または修正申告書を提出することができるとされています(相続税法30条1項・31条1項)。条文上は「することができる」という任意の規定ですが、申告をしないままでいると、税務署長による更正・決定が行われることがあります(相続税法35条)。もともと相続税の基礎控除の範囲内で申告が不要だった方でも、受け取った金額によっては申告が必要になる場合があります。

立場手続き根拠・期限
遺留分侵害額を支払った側
(受遺者・受贈者)
更正の請求(納め過ぎた相続税の還付)相続税法32条1項/事由を知った日の翌日から4か月以内
遺留分侵害額を受け取った側
(遺留分権利者)
期限後申告・修正申告相続税法30条1項・31条1項/提出しない場合は更正・決定があり得る(同法35条)
具体的な税額の計算、申告書の作成、適用できる特例の判断は税務の専門領域です。実際の申告や更正の請求にあたっては、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。

不動産で支払うと譲渡所得税がかかる点に注意

遺留分侵害額は金銭債権ですが、手元に十分な現預金がないため、不動産や株式を渡すことで支払いに代えるという解決もあり得ます。ここに大きな落とし穴があります。

国税庁の質疑応答事例では、遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて土地を移転した場合、これは代物弁済に該当し、支払った側に対して譲渡所得の課税が行われるとされています(所得税法33条、民法1046条)。つまり、遺留分侵害額に相当する価額でその土地を譲渡したものとして扱われ、相続税とは別に所得税・住民税の負担が生じ得るということです。金銭で支払えば生じない負担ですから、支払方法の選択は税負担を含めて検討する必要があります。

また、受け取る側にとっても、金銭で受け取る場合と資産で受け取る場合とで、小規模宅地等の特例などの適用可否に違いが生じることがあります。手元資金が足りない場合の分割払いや期限の許与(民法1047条5項)といった選択肢については、遺留分侵害額請求をされて払えない場合の対処法で詳しく解説しています。

税金を踏まえた遺留分交渉の進め方

遺留分の交渉は、単に「いくら払うか」だけの問題ではありません。税負担まで視野に入れると、次のような点が結論を左右します。

  • 手取りベースで考える……合意額がそのまま手元に残るとは限りません。受け取る側は相続税、支払う側は還付の可否や譲渡所得課税を踏まえて検討します。
  • 支払方法を明確にする……金銭で支払うのか、不動産等を移転するのかによって税負担が変わります。安易に「土地を渡して解決」とすると想定外の課税を招くことがあります。
  • 確定した日付を合意書に残す……更正の請求の期限は「事由が生じたことを知った日」から起算されます。合意書や調停調書に金額の確定日と支払期日を明記しておきます。
  • 弁護士と税理士の連携……遺留分の額は法律問題、税額の計算と申告は税務の問題です。切り分けつつ連携させることで無用な負担を避けられます。

遺留分侵害額の計算の考え方については遺留分侵害額の計算方法で解説しています。相続をめぐる紛争全般の取扱いについては、相続問題の取扱分野ページもご覧ください。

よくある質問

Q1. 相続税の申告期限までに遺留分が確定しない場合はどうすればよいですか?

相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法27条1項)。遺留分をめぐる交渉や調停が続いていても、この期限は延びません。まずは遺言や現状の取得内容に基づいて期限内に申告・納付し、その後に遺留分侵害額が確定した段階で、更正の請求や修正申告によって精算するのが基本的な流れです。

Q2. 遺留分侵害額を支払った側は相続税を取り戻せますか?

遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことにより、すでに申告した相続税額が過大となった場合には、更正の請求をすることができます(相続税法32条1項)。国税庁の案内では、この後発的な事由による更正の請求は、事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内とされています。手続をしなければ自動的には還付されない点に注意が必要です。

Q3. 遺留分侵害額を受け取った側は何か手続きが必要ですか?

金銭の支払を受けた遺留分権利者は、相続税の期限後申告書または修正申告書を提出することができるとされています(相続税法30条1項・31条1項)。これらは「することができる」という規定ですが、申告をしない場合には税務署長による更正・決定が行われることがあります(相続税法35条)。取扱いの詳細は税理士や税務署にご確認ください。

Q4. 遺留分侵害額を不動産で支払うと税金がかかるというのは本当ですか?

本当です。国税庁の質疑応答事例では、遺留分侵害額の支払に代えて土地を移転した場合は代物弁済に該当し、支払った側に譲渡所得の課税が行われるとされています(所得税法33条、民法1046条)。金銭で支払う場合には生じない負担ですので、支払方法を決める前に税務上の影響を確認しておくことが重要です。

Q5. 遺留分の交渉で税金を考慮するにはどうすればよいですか?

合意した金額がそのまま手元に残るとは限らないため、税負担を織り込んだ「手取り」で条件を検討することが大切です。あわせて、支払方法(金銭か資産か)、金額が確定した日、支払時期を合意書に明確に記載しておくと、更正の請求などの起算点が明らかになります。税額の計算そのものは税理士の領域ですので、弁護士と税理士が連携して進めることをおすすめします。

まとめ

遺留分侵害額請求は、相続税の申告期限である10か月以内に決着しないことが多く、確定後の精算が避けられません。支払った側は事由を知った日の翌日から4か月以内の更正の請求(相続税法32条1項)、受け取った側は期限後申告・修正申告(相続税法30条1項・31条1項)を検討することになります。とりわけ更正の請求の期限は短く、見落とすと払い過ぎた相続税を取り戻せなくなるおそれがあります。

また、金銭に代えて不動産を渡す解決は、代物弁済として譲渡所得の課税を招き得ます。遺留分の交渉では、金額だけでなく、支払方法・確定時期・税負担まで見据えた設計が必要です。「いくらで合意すべきか」「この条件で本当に損はないか」とお悩みの方は、期間制限のある手続が関わることもありますので、早めに弁護士へご相談ください。

遺留分侵害額請求でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、横浜を中心に遺留分侵害額請求・遺産分割をめぐる紛争案件について多数の対応実績を有しております。請求する側・請求された側のいずれの立場についても、税務上の影響を踏まえた解決の見通しを弁護士がご説明いたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。また、税務の取扱いについては税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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