タングラム法律事務所

発信者情報開示命令の申立書に添付する別紙目録の書き方を解説

発信者情報開示命令の申立書に添付する別紙目録の書き方を解説

発信者情報開示命令の申立書に添付する別紙目録の書き方を解説

発信者情報開示命令の申立書に添付する別紙目録の書き方を解説

発信者情報開示命令の申立書に添付する別紙目録の書き方を解説

誹謗中傷の投稿者を自分で特定しようと、裁判所のウェブサイトから発信者情報開示命令申立書の書式をダウンロードしてみたものの、「別紙当事者目録のとおり」「別紙発信者情報目録記載の各情報」という言葉が並ぶだけで、その別紙をどう作ればよいのかがわからない——。こうしたご相談は少なくありません。申立書の本体はチェック式になった一方、実際の難しさは添付する別紙の側に寄せられているためです。

この記事では、東京地方裁判所民事第9部が公開している書式・記載例をもとに、各目録が何を書くためのものか、自分で作成する場合にどこでつまずきやすいかを、横浜の弁護士が整理して解説します。

発信者情報開示命令の申立書は「本体+別紙目録」でできている

発信者情報開示命令は、情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)に基づく非訟手続です。東京地方裁判所民事第9部は、申立書本体をチェック式にした書式を公開しており、令和7年7月改訂版が最新のものとして掲載されています。

この書式の1枚目には「目録確認欄」があり、当事者目録・発信者情報目録・投稿記事目録・権利侵害の説明、そして提供命令を申し立てる場合には主文目録が並んでいます。申立書は本体だけでは完結せず、次の別紙とセットで初めて成立する構造です。

別紙何を書くものか必要な場面
当事者目録申立人と相手方(プロバイダ等)の表示常に必要
投稿記事目録問題とする投稿そのものの特定常に必要
発信者情報目録開示を求める情報の範囲常に必要
権利侵害の説明権利侵害が明白であることの説明常に必要
主文目録提供命令で求める提供の内容提供命令を併せて申し立てる場合

申立ての趣旨は「相手方は、申立人に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ」という一文にすぎず、何をどこまで開示させるかは発信者情報目録の書きぶりで決まります。目録は添え物ではなく、請求の中身そのものです。発信者情報開示請求の全体像については、当事務所の発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページでも解説しています。

当事者目録——相手方の正式名称と代表者でつまずく

当事者目録には、申立人(あなた)の住所・氏名と、相手方となるプロバイダの表示を記載します。送達場所や電話番号・FAX番号も併記する形式です。

自分で申し立てる場合に最初の関門になるのが、相手方の表示です。海外事業者が相手方になる場合、記載例でも外国の住所を日本語で表記し、「上記代表者(日本における代表者)」という肩書を用いる形が示されています。法人の正式名称・本店所在地・代表者名は資格証明書で裏づける必要があり、申立書の附属書類欄にも「相手方(法人)の資格証明書」「相手方の日本における代表者(法人)の資格証明書」が挙げられています。

相手方の名称が1文字でも違えば、決定が出ても執行や後続手続で支障が生じかねません。サイトのフッターやヘルプページの表記をそのまま書き写すのではなく、必ず公的な証明資料に基づいて記載してください。

投稿記事目録——「どの投稿か」を一意に特定する

投稿記事目録は、問題とする投稿を特定するための別紙です。裁判所の記載例では、サイトの名称を掲げたうえで、投稿ごとに次の3点を記載する形式が示されています。

  • アカウント名(スクリーンネーム)
  • 閲覧用URL
  • 投稿日時(JSTとUTCの両方)

自分で作成する場合に最も多いつまずきが、この投稿日時です。SNSの画面上には「3日前」といった丸めた表示しか出ないことが多く、秒単位の日時は画面を見ているだけでは分かりません。投稿IDやページのソースから割り出す必要があり、サービスごとに方法が異なります。当事務所では、Xのリポスト日時を特定する方法について別記事で詳しく扱っています。

なお、申立書には「関連事情」欄があり、投稿がすでに削除されている場合や、URLの裏づけとなる書証が入手できない場合、投稿日時が特定できない場合には、その旨をチェックして申告する仕組みになっています。

発信者情報目録——開示を求める情報の範囲を決める

発信者情報目録は、別紙のうち最も事案ごとの差が大きい部分です。相手方がコンテンツプロバイダ(サイト運営者)かアクセスプロバイダ(回線事業者)か、投稿時の通信の情報を求めるのか、ログイン時の通信の情報(特定発信者情報)まで求めるのかによって書く内容が変わります。

裁判所の記載例②(コンテンツプロバイダに対し開示命令のみを申し立てる場合)では、アカウントに登録された電話番号・電子メールアドレスに加え、アカウント作成時の接続元IPアドレス及びタイムスタンプ、投稿日時に最も時間的に近接したログイン時の接続元IPアドレス及びタイムスタンプを求める形が示されています。投稿時のIPアドレスを保存していないログイン型のサービスでは、この型が使われます。詳しくは特定発信者情報の開示請求に関する記事もご参照ください。

特定発信者情報を求める場合には、申立書の「補充性」の欄でイ・ロ・ハのいずれかを選択する必要があります。目録の型と補充性の選択は連動しており、片方だけを整えても意味がありません。東京地方裁判所は「発信者情報目録選択のためのフローチャート図」と「発信者情報目録記載例集」を公開しているため、まずこれで自分の事案がどの型に当たるかを確認するところから始めるのが確実です。

主文目録と権利侵害の説明——併願する命令に応じて追加する

提供命令を併せて申し立てる場合には、主文目録が必要になります。主文目録には、相手方が保有する情報から他の開示関係役務提供者(多くは経由プロバイダ)を特定できる場合はその氏名等情報を申立人に提供すること、特定できない場合はその旨を提供すること、申立人が次の相手方に申立てをした旨を通知したときは当該プロバイダへ情報を提供することが、条文に沿った表現で記載されます。提供命令の仕組みについては、提供命令を解説した記事をご覧ください。

アクセスプロバイダに対しては、消去禁止命令を併せて申し立てることがあります。この場合、別紙が増えるわけではありませんが、申立書の「消去禁止命令の必要性」欄で、相手方が任意保存をしないこと等を記載します。アクセスログの保存期間は3か月程度とされることが多く、時間との勝負になる点は、ログ保存期間と消去禁止命令の記事で解説したとおりです。

「権利侵害の説明」はExcel形式の参考書式が用意されており、投稿のどの部分が、どの権利をどのような理由で侵害しているのかを、要件に対応させて整理して記載します。

提出前に確認すべきこと——費用・郵便料・電子申立ての可否

東京地方裁判所民事第9部の案内によれば、開示命令・提供命令・消去禁止命令の申立てには、申立てごとに各1000円の申立手数料が必要で、申立人または相手方が複数の場合は人数分の額の収入印紙が必要とされています。印紙は申立書1枚目表の上部余白等に貼付します。郵便料は、申立時にレターパックライト(相手方の数に応じた個数)を予納する取扱いです。ほかに、申立書の写し・証拠説明書・甲号証の写し・チェックリストなどの附属書類の確認欄が書式の末尾にあります。

発信者情報開示命令事件は、令和8年5月21日から始まった民事訴訟の全面電子化の対象外とされており、申立書は従前どおり書面で提出する必要があります(開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴えは電子申立ての対象です)。「mintsで出せるはず」と考えて準備を進めると行き違いが生じますので、注意してください。

管轄は情報流通プラットフォーム対処法9条・10条等に定められており、裁判所がフローチャートを公開しています。相手方が外国法人か国内法人かなどで結論が変わるため、提出先は事前に確認してください。

自分で作る場合の限界と、弁護士に依頼した場合の違い

書式と記載例が公開されている以上、目録を自分で作成すること自体は可能です。もっとも、実務上は次のような壁があります。

  • 投稿日時を秒単位で特定できず、投稿記事目録が埋まらない
  • 相手方の資格証明書の取得方法が分からず、当事者目録が確定しない
  • ログイン型か投稿型かの判断を誤り、発信者情報目録の型と補充性の主張が噛み合わない
  • 訂正のやり取りが重なるうちに、アクセスプロバイダのログ保存期間が経過してしまう

最後の点がとりわけ重要です。開示命令は、コンテンツプロバイダへの手続とアクセスプロバイダへの手続を順に進める必要があり、全体では数か月を要することが一般的です(詳しくは投稿者特定までの期間を解説した記事をご覧ください)。書面の不備で数週間を失うことが、そのまま特定の可否に直結しかねません。

弁護士に依頼した場合は、投稿日時の技術的な特定、相手方法人の資格証明書の取得、事案に応じた目録の型の選択、権利侵害の説明の組み立てまでを一括して行うことになります。開示後の損害賠償請求まで見据えて、どの情報を目録に入れておくべきかを判断できる点も違いといえます。

よくある質問

目録は申立書とは別の用紙で作る必要がありますか。

東京地方裁判所民事第9部が公開している書式では、各目録はいずれも「(別紙)」として申立書本体とは別のページに作成する形になっています。申立ての趣旨や理由の中で「別紙発信者情報目録記載の各情報」などと引用する構造のため、別紙として独立させておく必要があります。

投稿日時はJSTだけ書けばよいですか。

裁判所の記載例では、投稿日時をJST(日本標準時)とUTC(協定世界時)の両方で併記する形式が示されています。海外事業者のログはUTCで記録されていることが多く、突き合わせのために両方を書いておくことが想定されているものと考えられます。

発信者情報目録にはどこまで書けばよいのでしょうか。

相手方がコンテンツプロバイダかアクセスプロバイダか、また特定発信者情報(ログイン時情報)を求めるかどうかで記載内容が変わります。東京地方裁判所は「発信者情報目録選択のためのフローチャート図」と「発信者情報目録記載例集」を公開しており、これらを参照して自分の事案に対応する型を選ぶことになります。

目録に誤りがあった場合はどうなりますか。

東京地方裁判所民事第9部は参考書式として「訂正申立書」の様式を公開しており、申立て後に記載を訂正する手続が予定されています。もっとも、訂正が重なれば審理は長引き、その間にアクセスログの保存期間が経過するおそれもあるため、当初から正確に作成しておくことが望まれます。

まとめ

発信者情報開示命令の申立書は、チェック式の本体と、当事者目録・投稿記事目録・発信者情報目録・権利侵害の説明(提供命令を併願する場合は主文目録)という別紙で構成されています。申立ての趣旨が「別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ」という一文である以上、請求の中身を決めているのは目録の側です。

要点は、当事者目録は相手方の正式名称と代表者を資格証明書で裏づけること、投稿記事目録は投稿日時をJST・UTC併記で秒単位まで特定すること、発信者情報目録は相手方の類型と補充性の選択に対応した型を選ぶこと、の3点です。

発信者情報開示命令の申立てでお困りの方へ

タングラム法律事務所では、理系・ITエンジニア出身の弁護士が、インターネット上の誹謗中傷について、投稿の証拠保全から発信者情報開示命令の申立て、投稿者特定後の損害賠償請求まで対応しております。目録の作成でつまずいている段階からでもご相談いただけます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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