LINEヤフーは弁護士会照会で何を回答する?電話番号と開示の範囲
LINEヤフーは弁護士会照会で何を回答する?電話番号と開示の範囲
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月23日 最終更新日:2026年9月23日
「LINEのアカウントしか分からない相手でも、弁護士会照会で調べられるらしい」と聞いても、実際にLINEから何が分かるのかは、はっきりしないという方が多いのではないでしょうか。相手の名前や住所がそのまま分かるのか、トークの内容はどうなるのか。依頼する前に知っておきたいポイントです。
LINEを運営するLINEヤフー株式会社は、弁護士会照会への対応方針を自社のウェブサイトで公表しています。この記事では、その公表内容をもとに、照会に応じてもらうための要件、回答される情報と回答されない情報、そして氏名・住所を知るための次の照会について、横浜の弁護士が解説します。
LINEヤフーは弁護士会照会への対応方針を公表している
弁護士会照会は、弁護士法23条の2に基づき、弁護士が受任している事件について所属弁護士会に申し出て、弁護士会がその必要性と相当性を審査したうえで、企業や団体に必要な事項の報告を求める制度です。
LINEヤフー株式会社は、「弁護士法第23条の2に基づく照会への対応について」というページで、ユーザーに関する情報はプライバシーに関わるものであり、個人情報保護法や電気通信事業法により保護する義務を負っていることから、照会ごとに厳正な審査を行い、弁護士会への情報開示が適切と判断できる場合に限り開示する、という考え方を示しています。
なお、個人情報保護委員会は、弁護士会照会への報告は個人情報保護法27条1項1号の「法令に基づく場合」に当たり、本人の同意なく個人データを提供できるとの見解を示しています。インターネット上の相手方を特定する手続の全体像は、インターネット問題の取扱分野のページでもご案内しています。
照会に応じてもらうための3つの要件
LINEヤフー株式会社は、次の1〜3の要件を満たす場合に、開示の必要性と相当性の双方が認められる範囲で開示請求に応じることを検討するとしています(同社ページより引用)。
- 当社が保有し、当社が開示主体となり得る情報を開示対象としていること
- 開示対象となる情報が当社で一意に特定可能な情報であって、かつその特定に有効な識別子等が不足なく示されていること
- 開示を行うことで他の法令等に抵触するおそれがないこと
実務上とくに重要なのが2つ目の要件です。LINEの表示名やアイコンは自由に変更でき、同じ表示名のアカウントも多数存在するため、それだけでは対象のアカウントを一意に特定できません。そこで、相手のプロフィール画面から通報し、通報の日時と回数を照会の申出書に示すという方法がとられています。通報の具体的な方法と注意点は、LINEの通報で相手を特定する方法の記事で解説しています。
回答される情報:原則として電話番号とメールアドレス
LINEヤフー株式会社は、照会事由ごとに、必要かつ相当と認める範囲で、主に氏名・住所・郵便番号・電話番号・メールアドレスの開示を検討するとしています。ただし、サービスごとに登録情報に差異があり、照会事由に直接的な関係性の認められるサービスの登録情報に限定して開示を検討するとしたうえで、LINEについて次のように説明しています。
つまり、慰謝料請求などの訴訟を起こすために相手の住所を調べたいという典型的な場面では、LINEヤフーから直接、氏名や住所の回答を受けることは基本的に想定されていません。神奈川県弁護士会の案内でも、回答されるのは電話番号及びメールアドレスで、氏名や住所までは回答されないと説明されています。
回答されない情報:トーク履歴や通信の相手など
LINEヤフー株式会社は、原則として弁護士会照会で開示ができない場合の例として、次のようなケースを挙げています。
- LINEトーク履歴などの通信履歴、またはその通信相手を開示対象とするケース
- LINEトーク履歴などの通信履歴が付帯する通報機能を用いた通報からの調査を必要とするケース
- その他の通信の秘密に該当するおそれがあると同社が判断する情報を開示対象とするケース
- 要配慮個人情報やクレジットカード情報など、プライバシー性の高い情報を開示対象とするケース
- 調査に過大な工数を要し、正常な業務遂行に支障をきたすおそれがあるケース
- 同社のWebサイト等で公表されており、容易に調べることが可能な情報に関するケース
相手が誰とやり取りしているか、どのようなメッセージを送っていたかといった情報は、照会によっても分かりません。請求の証拠となるトーク履歴は、ご自身の端末に残っているものをスクリーンショット等で保存することが基本になります。また、2つ目の例のとおり、トーク画面からの通報(メッセージを選んで行う通報)を前提とする照会は原則として開示されないため、通報はプロフィール画面から行う必要があります。
氏名・住所を知るには携帯電話会社への照会が必要
LINEヤフーから電話番号の回答を受けたら、次に、その電話番号を契約している携帯電話会社に対して、契約者の氏名・住所を照会します。この2段階目の照会で、相手方の氏名・住所が判明する可能性があります。
もっとも、次のような場合には、照会先が増えたり、特定に至らなかったりすることがあります。
- 相手が番号ポータビリティ(MNP)で携帯電話会社を移っている場合
- 格安SIM事業者(MVNO)の回線である場合
- 電話番号が解約され、別の人が使っている場合(LINEヤフーが電話番号を回答しない場合があります)
- 回線が他人名義・法人名義である場合や、海外の電話番号である場合
とくに投資詐欺などに使われるアカウントは、他人名義の携帯電話や海外の電話番号で登録されていることが多く、照会によっても実際の加害者の特定に至らない可能性があります。詐欺の被害に遭った場合は、まず警察に相談してください(被害届が受理されない理由と対処法)。
照会には強制力がない点に注意
弁護士会照会を受けた企業は、正当な理由がない限り報告すべきものと解されていますが、回答を強制する手段はありません。最高裁平成28年10月18日判決は、照会に対する報告を拒絶されたことについて、弁護士会が損害賠償を請求することはできないと判断しています。そのため、照会の申出では、LINEヤフー株式会社の公表する要件を満たすように、対象のアカウントを特定する情報や照会の必要性を丁寧に示すことが重要です。
SNSの投稿者を特定する発信者情報開示請求では、裁判所の命令により開示を求めることができますが(Googleマップの口コミ投稿者を特定する方法参照)、1対1のLINEのやり取りは同法の対象外です。弁護士会照会がほぼ唯一の現実的な手段となるからこそ、要件を踏まえた申出が結果を左右します。
弁護士会照会による相手方の特定の全体像(流れ、対象となるケース、費用の目安)は、LINEしか知らない相手を特定する方法|弁護士会照会の流れと費用で解説しています。
よくある質問
LINEヤフーに照会すれば、相手の氏名と住所が分かりますか?
LINEヤフー株式会社の公表によれば、LINEのサービスについて訴状の送達先調査が照会事由となるような場合、基本的には電話番号とメールアドレスのみが開示の検討対象となります。氏名・住所を知るには、回答された電話番号をもとに、携帯電話会社へ改めて照会する必要があります。
相手とのトーク履歴を開示してもらうことはできますか?
できません。LINEヤフー株式会社は、LINEトーク履歴などの通信履歴やその通信相手を開示対象とするケースを、原則として弁護士会照会で開示できない例に挙げています。トーク履歴は、ご自身の端末に残っているものを証拠として保存してください。
LINEヤフーが回答を拒否することはありますか?
あります。同社は照会ごとに社内審査を行い、要件を満たす場合に、開示の必要性と相当性の双方が認められる範囲で応じることを検討するとしています。また、弁護士会照会には回答を強制する手段がないため、回答が得られない可能性もあります。
個人情報なのに、本人の同意なく回答してよいのですか?
個人情報保護委員会は、弁護士法23条の2に基づく報告の請求は個人情報保護法27条1項1号の「法令に基づく場合」に当たり、本人の同意を得ずに個人データを提供することができるとの見解を示しています。
まとめ
LINEヤフー株式会社は、弁護士会照会に応じる3つの要件と開示の範囲を公表しています。LINEのアカウントについて回答されるのは、原則として電話番号とメールアドレスであり、トーク履歴や通信の相手は開示されません。相手方の氏名・住所を知るには、回答された電話番号をもとに携帯電話会社へ改めて照会する必要があります。
照会には強制力がないため、要件を満たす申出を組み立てられるかが重要です。横浜のタングラム法律事務所では、LINEしか分からない相手方について、通報の案内から2段階の照会、特定後の請求まで一貫して対応しています。
費用と手続の流れは、LINEしか知らない相手の特定(弁護士会照会)の詳細はこちらでご確認いただけます。
LINEのアカウントしか分からない相手のことでお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、インターネット上の相手方の特定(発信者情報開示請求・弁護士会照会)を数多く取り扱っております。LINEヤフー株式会社への照会から携帯電話会社への照会、特定後の請求まで一貫して対応します。
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