不倫相手に謝罪させることはできる?謝罪文・謝罪条項を弁護士が解説
不倫相手に謝罪させることはできる?謝罪文・謝罪条項を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月24日 最終更新日:2026年9月24日
配偶者の不倫が発覚したとき、「お金よりも、まずは不倫相手にきちんと謝ってほしい」と感じる方は少なくありません。家庭を壊されたという思いが強いほど、慰謝料の金額以上に、相手の反省の言葉を求めたくなるのは自然なことです。
この記事では、不倫相手に謝罪を求めることが法的にどこまでできるのか、謝罪文や示談書の謝罪条項はどう扱われるのか、謝罪を強く迫った場合のリスクは何かを、横浜の弁護士が解説します。反対に、不貞慰謝料を請求され「謝罪文を書け」と求められている方が注意すべき点もあわせて取り上げます。
結論から言うと、不貞慰謝料の請求は金銭による賠償が原則であり、裁判で不倫相手に謝罪そのものを強制することは、一般的には難しいと考えられています。謝罪は、示談や訴訟上の和解の中で相手が任意に応じる形で実現するのが通常です。また、謝罪を強く迫ると強要罪などのトラブルに発展するおそれがあるため、求め方には注意が必要です。
不倫相手に謝罪を求める法的な根拠はあるか
不貞行為の慰謝料請求は、民法709条・710条に基づく不法行為による損害賠償請求です。そして、不法行為による損害賠償の方法について、民法722条1項は民法417条を準用しており、同条は「損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める」と定めています。
つまり、法律が予定している救済は原則として「お金」であり、精神的苦痛に対する償いも慰謝料という金額で評価されます。そのため、不貞慰謝料の裁判で「被告は原告に謝罪せよ」という判決を得ることは、一般的には困難と考えられています。
名誉毀損の「謝罪広告」との違い
例外として、民法723条は、名誉を毀損した者に対し、裁判所が「名誉を回復するのに適当な処分」を命じることができると定めています。最高裁昭和31年7月4日大法廷判決(民集10巻7号785頁)は、新聞への謝罪広告の掲載を命じる判決について、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものであれば代替執行が可能であり、憲法19条(思想及び良心の自由)にも反しないと判断しました。
もっとも、これは名誉毀損の場面に関する規定・判例です。不貞行為は、配偶者の名誉を社会的に低下させる行為とは性質が異なるため、通常の不貞慰謝料請求でこの規定を根拠に謝罪を求めることは想定されていないと考えられます。
謝罪を実現する現実的な方法
裁判で強制できないとしても、謝罪を得る方法がないわけではありません。実務では、次のような形で謝罪が実現することがあります。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 示談交渉での謝罪文 | 慰謝料の支払いと合わせて、相手が謝罪文を差し入れる | 相手が任意に応じる場合に限られる |
| 示談書の謝罪条項 | 「乙は甲に対し、不貞行為について謝罪する」などの文言を入れる | 金額や他の条件との優先順位を整理する |
| 訴訟上の和解 | 裁判の途中で和解する際、和解条項に謝罪の文言を入れる | 判決では得にくい内容を、合意で盛り込める |
いずれも相手の同意が前提です。謝罪の文言を入れる場合も、清算条項・接触禁止条項・求償権の扱いなど、示談書の重要な条項と一緒に検討することが大切です。示談書全体の作り方は「不貞慰謝料の示談書(合意書)の書き方と注意点」で詳しく解説しています。
なお、交渉では「謝罪の文言を入れる代わりに金額を下げてほしい」といった駆け引きが生じることもあります。謝罪と金銭のどちらを重視するのか、あらかじめ自分の中で優先順位を決めておくと、交渉で迷いにくくなります。
謝罪の有無は慰謝料額に影響するか
不貞慰謝料の金額は、婚姻期間、不貞の期間や回数、不貞によって婚姻関係が破綻したかどうかなど、さまざまな事情を総合して判断されます。不貞発覚後の相手の態度、たとえば真摯に謝罪しているか、事実を否定し続けているか、といった事情も、判断の一要素として考慮されることがあります。
ただし、謝罪がないことだけで慰謝料が大きく増えるとは限りません。反対に、請求された側が謝罪したからといって、必ず減額されるわけでもありません。謝罪の有無は、あくまで多数の事情の一つとして位置づけておくのが現実的です。
謝罪を強く迫ることのリスク
怒りが強いあまり、不倫相手に対して行き過ぎた方法で謝罪を求めると、かえって自分が法的責任を問われるおそれがあります。
- 強要罪(刑法223条):生命・身体・名誉・財産などに害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた場合に成立し得ます。謝罪文を書く法的義務はないため、「謝罪文を書かなければ職場にばらす」などと迫ると、問題となる可能性があります
- 脅迫罪(刑法222条):害悪の告知そのものが処罰の対象となり得ます
- 名誉毀損・プライバシー侵害:職場や家族、SNSで不倫を暴露して謝罪を迫ると、逆に損害賠償を請求されるおそれがあります
職場への連絡が持つリスクについては「不倫相手の職場・会社に連絡してもいい?法的リスクと注意点」もご覧ください。謝罪を求めること自体が違法なわけではありませんが、方法を誤ると、本来請求できたはずの慰謝料の交渉まで不利になりかねません。
請求された側が謝罪文を書く前に知っておくべきこと
反対に、不貞慰謝料を請求され、相手の配偶者から「謝罪文を書け」「謝りに来い」と求められている方もいるでしょう。道義的に謝罪したいという気持ちは尊重されるべきですが、法的には次の点に注意が必要です。
- 謝罪文を書く法的義務はない:前述のとおり、損害賠償は金銭が原則です
- 不貞の証拠になり得る:謝罪文に不貞の事実を具体的に書くと、後の交渉や裁判で、事実を認めた証拠として扱われるおそれがあります
- 時効との関係:支払義務を認める内容を書くと、民法152条1項の「権利の承認」と評価され、時効が更新される可能性があります
- 書き直しを繰り返し求められることがある:感情的な対立が深まり、金額の話が進まなくなることもあります
請求を認めるかどうかの判断については「不貞慰謝料を請求されたら認めるべき?認める前の注意点」で詳しく解説しています。直接会って謝罪するよう求められている場合は、その場で念書にサインさせられるリスクもあるため、「不貞慰謝料を請求され直接交渉を求められたら?」もあわせてご確認ください。
弁護士に依頼した場合の謝罪の扱い
弁護士が代理人として交渉する場合、謝罪の希望も交渉条件の一つとして整理し、相手方に伝えることができます。当事者同士では感情的になりやすい謝罪の問題も、代理人を介することで、金額・支払方法・接触禁止などの条件とあわせて冷静に話し合いやすくなります。
請求された側にとっても、弁護士が間に入ることで、謝罪の意思を示しつつ、不利な事実認定や過大な支払約束につながらない表現を検討できます。当事務所の不貞慰謝料に関する取扱いの詳細は、不貞慰謝料請求の取扱分野ページをご覧ください。
よくある質問
裁判で不倫相手に謝罪を命じてもらうことはできますか?
不法行為による損害賠償は金銭で行うのが原則であり(民法722条1項・417条)、不貞慰謝料の裁判で謝罪そのものを命じる判決を得ることは、一般的には難しいと考えられています。謝罪は、示談や訴訟上の和解の中で、相手方が任意に応じる形で実現するのが通常です。
謝罪がないことを理由に慰謝料を増額できますか?
不貞発覚後の態度や反省の有無は、慰謝料額を判断する際の事情の一つとして考慮されることがあります。ただし、謝罪がないことだけで大きく増額されるとは限らず、不貞の期間や婚姻関係への影響など、他の事情と合わせて判断されます。
不倫相手に謝罪文を書くよう求められました。書かなければいけませんか?
謝罪文を書く法的な義務はありません。謝罪文は不貞の事実や支払義務を認めた証拠として扱われるおそれがあり、時効の関係でも債務の承認と評価される可能性があります。書く前に、内容と影響を弁護士に確認することをおすすめします。
示談書に謝罪の条項を入れることはできますか?
当事者が合意すれば、示談書に謝罪の文言を入れることは可能です。実務上もよく見られます。ただし、謝罪の文言にこだわりすぎて金額や接触禁止などの重要な条件の交渉が進まなくなることもあるため、優先順位を整理して交渉することが大切です。
まとめ
不倫相手に謝罪を求めたいという気持ちは当然のものですが、法律上の救済は金銭による賠償が原則であり、裁判で謝罪を強制することは一般的には難しいと考えられています。謝罪を得たい場合は、示談書や訴訟上の和解の中で、相手の任意の合意を得る形を目指すのが現実的です。
一方で、謝罪を強く迫ると強要罪や名誉毀損などのリスクがあり、請求された側が安易に謝罪文を書くと不利な証拠になるおそれもあります。謝罪の問題は感情が絡むからこそ、慰謝料の金額や他の条件と切り分けて冷静に扱うことが重要です。横浜の弁護士として、謝罪の希望も含めた解決の形を一緒に考えます。
不倫相手への謝罪要求・謝罪文の扱いでお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料の請求・減額交渉について、請求する側・請求された側の双方からのご相談をお受けしています。謝罪の求め方や謝罪文を書くべきかどうかなど、示談の条件を含めて具体的にアドバイスいたします。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。