タングラム法律事務所

誹謗中傷を削除しないサイト運営者の責任は?情プラ法3条と対処法

誹謗中傷を削除しないサイト運営者の責任は?情プラ法3条と対処法

誹謗中傷を削除しないサイト運営者の責任は?情プラ法3条と対処法

誹謗中傷を削除しないサイト運営者の責任は?情プラ法3条と対処法

誹謗中傷を削除しないサイト運営者の責任は?情プラ法3条と対処法

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月29日 最終更新日:2026年10月29日

誹謗中傷の投稿について運営者に削除を依頼したのに、返事がない、あるいは「削除には応じられません」とだけ回答された。こうした状況で、「投稿を放置している運営者にも責任があるのではないか」「運営者に損害賠償を請求できないのか」と考える方は少なくありません。

この記事では、誹謗中傷の削除に応じないサイト運営者が法律上どのような責任を負うのか、情報流通プラットフォーム対処法3条の仕組み、そして運営者に削除させるために被害者がとれる手段を、横浜の弁護士が解説します。

結論として、サイト運営者は、投稿によって他人の権利が侵害されていることを知っていた場合や、知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合などには、削除しなかったことについて損害賠償責任を負う可能性があります。ただし、情報流通プラットフォーム対処法3条1項により、その要件を満たさない限り運営者は責任を負わないとされているため、実務では運営者への賠償請求よりも、削除申出や削除の仮処分によって投稿を消させることを優先するのが一般的です。

誹謗中傷を削除しないサイト運営者に法的責任はあるのか

投稿を書いた本人(発信者)だけでなく、投稿を削除できる立場にあるサイト運営者も、権利侵害の投稿があることを知りながら放置した場合には、民法709条の不法行為責任を負う可能性があると考えられています。実際に、裁判例でも、匿名掲示板の管理者が名誉毀損の書き込みの削除に応じなかったことを違法と判断し、管理者に削除と損害賠償を命じたものがあります。

一方で、運営者にすべての投稿の監視義務を負わせると、問題のありそうな投稿が片端から削除され、表現の自由が過度に制約されるおそれがあります。そこで、運営者が責任を負う場面を限定しているのが、情報流通プラットフォーム対処法3条です。

情報流通プラットフォーム対処法3条1項|運営者が責任を負わない場合

情報流通プラットフォーム対処法(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律。2025年4月に旧プロバイダ責任制限法から改称)3条1項は、投稿によって他人の権利が侵害された場合でも、サイト運営者などは、原則として損害賠償責任を負わないと定めています。運営者が責任を負う可能性があるのは、次の両方を満たす場合に限られます。

要件内容
① 削除が技術的に可能であること権利を侵害した投稿について、不特定の者への送信を防止する措置(削除や非表示)を講じることが技術的に可能であること
② 権利侵害を知っていた、または知ることができたこと投稿によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき、または、投稿の存在を知っていて、権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき

注意したいのは、3条1項は「この場合には責任を負う」と定めた規定ではなく、「この場合でなければ責任を負わない」と定めた規定だという点です。運営者の責任の根拠は、あくまで民法709条などの一般の不法行為です。そのため、3条1項の要件を満たしたとしても、それだけで当然に賠償責任が認められるわけではなく、投稿が違法であること、損害の発生、因果関係などを被害者の側で主張・立証する必要があります。

実務上は、被害者からの削除依頼が、運営者が権利侵害を「知っていた」ことを基礎づける重要な事情になります。どの投稿が、なぜ権利を侵害しているのかを具体的に示して依頼することが大切です。依頼書の書き方は、送信防止措置依頼書の書き方|自分で削除依頼を送る手順で詳しく解説しています。

運営者が誹謗中傷の削除に慎重になる理由(3条2項)

運営者が削除に応じない背景には、投稿を削除すれば、今度は投稿者から「正当な投稿を勝手に消された」と責任を問われるおそれがあるという事情もあります。

この点について、情報流通プラットフォーム対処法3条2項は、運営者が投稿を削除した場合に、発信者に対して責任を負わない場合を定めています。具体的には、権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があった場合や、削除の申出を受けて発信者に削除に同意するかを照会し、照会を受けた日から7日を経過しても発信者から同意しない旨の申出がなかった場合です。

つまり、運営者にとっては、「権利侵害が明らかかどうか」が判断の分かれ目になります。意見や論評の形をとる投稿など、名誉毀損かどうかの判断が難しい投稿について運営者が削除をためらうのはこのためです。削除依頼では、権利侵害が明らかであることを根拠とともに示すことが重要になります。

大規模SNSには削除申出への対応義務がある

2025年4月施行の改正法により、総務大臣が指定した大規模なプラットフォーム(大規模特定電気通信役務提供者。X、Instagram、YouTube、TikTokなどが指定されています)に対して、削除の申出への対応を迅速化する義務が新たに課されました。主な内容は次のとおりです。

  • 削除の申出を受け付ける方法を定めて公表すること(22条)
  • 申出があったときは、遅滞なく必要な調査を行うこと(23条)
  • 申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、削除するかどうかの判断を申出者に通知すること(25条)
  • 削除に関する基準を定めて公表し、措置の実施状況を毎年公表すること(26条・28条)

運営者がこれらの義務に違反している場合、総務大臣は是正の勧告をすることができ、正当な理由なく勧告に従わないときは命令をすることができます(30条)。ただし、申出をすれば必ず削除されるわけではありません。申出の方法は、情プラ法の削除申出とは|大手SNS・掲示板に削除を求める手順で解説しています。

運営者が削除しないときに被害者がとれる手段

運営者が任意の削除に応じない場合、被害者がとり得る主な手段は次のとおりです。

手段概要注意点
削除の仮処分裁判所に申し立て、運営者に削除を命じる決定を求める担保金が必要になるのが通常。権利侵害の疎明が必要
法務局への相談人権擁護機関が削除依頼の方法を助言し、事案によっては運営者に削除を要請する要請に法的な強制力はない
運営者への損害賠償請求削除しなかったことによる損害の賠償を求める3条1項の要件と違法性・損害の立証が必要で、ハードルは高い

投稿が残っている限り被害が広がり続けるため、多くの事案では削除の仮処分が優先されます。仮処分の流れや費用は、ネット誹謗中傷の投稿削除を仮処分で求める方法をご覧ください。

また、損害の回復を図るには、発信者情報開示請求によって投稿者を特定し、責任を追及することも検討します。削除を先に行うと開示請求に必要な証拠が失われることがあるため、手続の順序には注意が必要です。削除請求や発信者情報開示請求の弁護士への依頼については、発信者情報開示請求・削除請求のページで詳しくご案内しています。SNSのなりすましやSNS上の誹謗中傷については、SNSなりすまし・誹謗中傷への対応の特設ページもご覧ください。

運営者への損害賠償請求を検討する前に知っておきたいこと

運営者に対する損害賠償請求は、理論上は可能でも、実際には難しい場面が少なくありません。運営者が海外の法人である場合などには、訴訟の手続や判決後の回収にも困難が伴います。運営者に責任を問うことを考える場合でも、まずは次の点を整理しておくことが大切です。

  • いつ、どの窓口に、どのような内容の削除依頼を送ったか(送信日時と依頼内容の控え)
  • 運営者からの回答の有無と内容
  • 依頼後も投稿が掲載され続けた期間と、その間に生じた被害の内容
  • 投稿の内容・URL・投稿日時を示す証拠

誹謗中傷の削除とサイト運営者の責任に関するよくある質問

Q. 削除依頼を無視されたら、すぐに運営者を訴えられますか?

削除依頼を無視されたことだけで、直ちに運営者に損害賠償を請求できるわけではありません。投稿によって権利が侵害されていること、運営者がそれを知っていたか知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったこと、削除が技術的に可能であったことなどが必要です。まずは削除させる手続を優先するのが一般的です。

Q. 運営者が投稿者を知っている場合、教えてもらえますか?

運営者が任意に投稿者の情報を開示することは多くありません。投稿者を特定するには、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示請求(裁判所の開示命令や仮処分等)を利用するのが通常です。

Q. 海外の運営会社でも削除を求める手続はできますか?

海外法人が運営するサイトやSNSでも、日本の裁判所に削除の仮処分を申し立てることができる場合があります。ただし、送達や翻訳に手間がかかることがあります。

Q. 削除に応じた運営者が、投稿者から訴えられることはありませんか?

情報流通プラットフォーム対処法3条2項は、権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があった場合などには、削除によって発信者に生じた損害について運営者が責任を負わないと定めています。この規定があるため、運営者は一定の場合に削除に応じやすくなっています。

まとめ|削除しない運営者への対応は弁護士にご相談ください

誹謗中傷の投稿を削除しないサイト運営者は、権利侵害を知っていた場合や知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合などには、損害賠償責任を負う可能性があります。もっとも、情報流通プラットフォーム対処法3条1項により運営者の責任が認められる場面は限られており、被害の拡大を止めるためには、削除申出や削除の仮処分によって投稿を消させることを優先するのが現実的です。

運営者に削除を拒まれた場合でも、根拠の示し方を見直したり、裁判所の手続を利用したりすることで、削除に至る可能性があります。どの手段をどの順序でとるべきかは事案によって異なるため、対応に迷われたときは弁護士にご相談ください。

削除に応じない投稿でお困りの方へ

タングラム法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求に数多く対応してきました。運営者に削除を拒まれた投稿についても、横浜の弁護士が手続の見通しをご説明します。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求・削除請求について見る

費用と手続の流れを確認する

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。