タングラム法律事務所

経営者保証を外したい|ガイドライン活用と解除の進め方を弁護士が解説

経営者保証を外したい|ガイドライン活用と解除の進め方を弁護士が解説

経営者保証を外したい|ガイドライン活用と解除の進め方を弁護士が解説

経営者保証を外したい|ガイドライン活用と解除の進め方を弁護士が解説

経営者保証を外したい|ガイドライン活用と解除の進め方を弁護士が解説

中小企業が金融機関から融資を受ける際、社長個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証(個人保証)」を求められることは、いまも少なくありません。会社が返済できなくなれば、経営者個人が自宅や預貯金を失うおそれがあり、「思い切った事業展開に踏み出せない」「後継者が事業承継をためらう」といった悩みの原因にもなっています。実際に「経営者保証を外したい」「社長の個人保証をなくしたい」と考える経営者の方は多いのではないでしょうか。

近年は、国が「経営者保証に依存しない融資慣行」の確立を進めており、経営者保証を外す・見直すための環境が整いつつあります。この記事では、その中心となる「経営者保証に関するガイドライン」の3要件や、解除に向けた進め方、2022年以降の制度改革(経営者保証改革プログラム)、事業承継・廃業の場面での取扱いまで、法務担当者のいない中小企業の経営者にもわかりやすいように、横浜の弁護士が整理して解説します。

経営者保証とは何か|なぜ問題になるのか

経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人となり、保証債務を負うことをいいます。企業が倒産して返済ができなくなった場合には、経営者個人が会社に代わって返済を求められることになります。

経営者保証には、経営への規律付けや、信用を補完して資金調達を円滑にする面があると指摘されています。その一方で、経営者が思い切った事業展開に踏み出せない、早期の事業再生に着手しにくい、円滑な事業承継の妨げになる、といった副作用も問題視されてきました。こうした課題を解決するために整備されたのが、次に説明する「経営者保証に関するガイドライン」です。連帯保証そのものの基礎知識については、連帯保証人を求められたときの個人保証の極度額規制(民法改正)を解説した記事もあわせてご参照ください。

経営者保証に関するガイドラインとは

「経営者保証に関するガイドライン」は、全国銀行協会と日本商工会議所が策定したもので、2013年(平成25年)12月に公表され、2014年(平成26年)2月1日から適用が開始されました。中小企業・経営者・金融機関に共通する自主的なルールと位置づけられており、保証契約の締結・見直し・解除や、保証債務の整理の場面で参照されます。

重要なのは、このガイドラインには法的な拘束力はなく、関係者が自発的に尊重・遵守することが期待されているという点です。したがって、経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は金融機関にゆだねられています。「要件を満たせば当然に外れる」というものではなく、金融機関に前向きな検討をしてもらいやすくするための共通ルール、と理解しておくとよいでしょう。

ガイドラインには、基本となる本体のほか、①事業承継時に焦点を当てた特則、②廃業時における基本的考え方、という関連文書も整備されており、場面に応じて使い分けられています。

経営者保証を外すための3要件

ガイドラインは、経営者保証を提供することなく融資を受けたり、既存の経営者保証を見直したりできる可能性がある場合として、次の3つの要件を掲げています。将来にわたってこれらを充足する体制が、社内外のガバナンスによって整えられていることが求められます。

要件内容具体的なイメージ
①法人と個人の分離資産の所有やお金のやりとりについて、法人と経営者が明確に区分・分離されている会社と社長の口座・資産を混同しない。役員報酬を適正額に設定し、会社資金の私的流用や不明瞭な貸付をしない
②財務基盤の強化財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である安定した利益・キャッシュフローを確保し、債務超過を解消するなど、会社単独での返済能力を高める
③経営の透明性金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている試算表や資金繰り表などを定期的に提出し、業績の変化を早めに共有する

3要件のすべてを満たす必要は必ずしもなく、その一部を満たす場合でも、金融機関は充足度合いに応じて、経営者保証を求めないことや、保証機能の代替手法の活用を検討することが期待されています。代替手法の一例として、一定の特約条項(定期的な財務情報の提出義務など)に違反しない限り保証債務の効力が発生しない「停止条件付保証契約」などが挙げられています。

なお、法人と個人の分離は、これから会社設立や法人化を考えている段階でも意識しておきたいポイントです。個人事業からの移行を検討している方は、個人事業から法人成りするタイミングと手続き・法務上の注意点を解説した記事もあわせてご覧ください。

経営者保証改革プログラムと最近の制度

経営者保証に依存しない融資慣行の確立をさらに加速させるため、経済産業省・金融庁・財務省は、2022年(令和4年)12月23日に「経営者保証改革プログラム」を公表しました。①スタートアップ・創業、②民間金融機関による融資、③信用保証付融資、④中小企業のガバナンス、という4つの分野に重点的に取り組む内容です。近年の主な動きを整理すると、次のとおりです。

金融機関の説明義務(2023年4月〜)

民間金融機関による融資の分野では、金融庁の監督指針が改正され、2023年(令和5年)4月以降、金融機関が経営者保証を求める際には、なぜ保証が必要なのかを事業者に対して説明し、その説明内容を記録することが求められるようになりました。経営者にとっては、「なぜ保証が必要なのか」を金融機関に確認しやすくなり、解除に向けた対話の入り口が広がったといえます。

創業・スタートアップ向けの新しい保証制度

創業の分野では、経営者の個人保証を不要とする信用保証制度(スタートアップ創出促進保証)が設けられるなど、創業時から経営者保証を求めない選択肢が広がっています。適用の要件・限度額・保証料などは制度ごとに異なるため、詳細は取引金融機関・信用保証協会や所管窓口でご確認ください。

保証料の上乗せで保証を提供しない選択肢(2024年3月〜)

信用保証付融資の分野では、2024年(令和6年)3月から、一定の保証料率の上乗せによって経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等の運用も始まっています。3要件をすべて満たしていない場合でも、保証料の負担と引き換えに経営者保証を回避する道が用意された点に意義があります。制度は随時見直されるため、利用を検討する際は最新の取扱いを確認することが大切です。

事業承継・廃業の場面での経営者保証

経営者保証は、事業承継や廃業の局面でとりわけ大きな問題になります。ガイドラインには、事業承継時に焦点を当てた特則が設けられており、後継者に経営者保証を当然に引き継がせるのではなく、その必要性を改めて検討することが求められています。前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めることは、原則として避けるべきとされています。事業承継特別保証制度や、事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家による支援の仕組みも整備されています。

また、やむを得ず廃業する場合についても、「廃業時における経営者保証に関するガイドラインの基本的考え方」が整備され、経営者の再チャレンジを後押しする方向で運用されています。会社をたたむ手続きそのものの流れは、会社の解散・清算手続きの流れ・費用・期間を解説した記事もご参照ください。

返済しきれない場合に手元に残せる資産

ガイドラインに基づいて保証債務を整理する場合、経営者の手元には一定の資産を残せる運用が示されています。具体的には、破産手続における自由財産(原則99万円)は原則として手元に残り、事業再生等の早期着手により法人からの回収見込額が増加した場合には、これに加えて一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に、年齢等に応じて約100万円〜360万円の範囲)を残すことが検討されます。また、華美でない自宅について、収入に見合った分割弁済等により住み続けられるよう検討される場合があり、返済し切れない保証債務の残額は原則として免除されるとされています。さらに、こうした債務整理の事実は信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。

経営者保証を外すための実務ステップ

経営者保証の解除・見直しを目指す場合、一般的には次のような流れで進めることが考えられます。会社の状況によって取るべき対応は異なりますが、全体像を押さえておくと、金融機関との対話を進めやすくなります。

ステップ内容
①現状の把握既存の借入ごとに、経営者保証の有無・保証の範囲を一覧化する。会社と個人の資産・お金の流れが分離できているかを点検する
②3要件のギャップ分析法人個人の分離・財務基盤・情報開示の3要件について、自社の不足点を洗い出す。役員報酬の適正化や貸付金の整理などの課題を特定する
③体制の整備試算表・資金繰り表の定期提出、内部管理体制の整備など、ガバナンスを強化する。必要に応じて認定経営革新等支援機関等の支援を活用する
④金融機関への相談・交渉取引金融機関に解除・見直しを申し出て、必要性の説明を受けたうえで、保証を求めない対応や代替手法を協議する
⑤保証債務整理(必要な場合)返済が困難になった場合は、ガイドラインに沿った保証債務の整理を、専門家の関与のもとで検討する

とりわけ既存の借入について保証を外す交渉や、返済が困難になった局面での保証債務整理は、金融機関との調整や資料の準備が必要で、専門的な判断を伴います。横浜で企業法務に取り組む弁護士としても、こうした場面では早めにご相談いただくことで、選択肢を広く確保しやすくなると考えています。

よくあるご質問

経営者保証は必ず外せますか?

経営者保証に関するガイドラインは法的な拘束力のない自主的なルールであり、保証を外すかどうかの最終的な判断は金融機関にゆだねられています。したがって、要件を満たしても必ず外せると保証されるものではありません。もっとも、法人と経営者の資産の分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示という3要件を満たすほど、経営者保証を求めない対応や保証機能の代替手法を検討してもらいやすくなると解されています。

銀行に経営者保証の解除を申し出ると、取引に悪影響がありますか?

2023年4月以降、金融機関が経営者保証を求める際には、なぜ保証が必要かを事業者に説明し、その内容を記録することが監督指針上求められています。制度は経営者保証に依存しない融資慣行の確立を後押しする方向にあり、解除の相談自体は正当な申出です。まずは取引金融機関に相談し、必要に応じて商工会議所や認定支援機関、弁護士などの専門家に相談することが考えられます。

会社が返済できなくなった場合、保証した個人資産はすべて失うのですか?

ガイドラインに基づいて保証債務を整理する場合、破産手続における自由財産(原則99万円)に加え、一定期間の生活費に相当する資産(年齢等に応じて約100万円から360万円の範囲で検討)を残せる場合があり、華美でない自宅に住み続けられるよう分割弁済等を検討する運用もあります。返済し切れない残額は原則として免除され、債務整理の事実は信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。個別の適用可否は専門家への確認が必要です。

創業したばかりでも経営者保証なしで借りられますか?

経営者保証改革プログラムのもとで、創業時に経営者の個人保証を不要とする信用保証制度(スタートアップ創出促進保証)など、経営者保証を求めない融資の選択肢が広がっています。適用の要件・限度額・保証料などは制度ごとに異なり、随時見直されるため、取引金融機関や信用保証協会、所管窓口で最新の内容を確認してください。

事業承継のときに経営者保証が障害になっています。どうすればよいですか?

事業承継の場面では、後継者に経営者保証を当然に引き継がせるのではなく、必要性を改めて検討することが求められています。ガイドラインには事業承継時に焦点を当てた特則があり、事業承継特別保証制度や専門家による支援の仕組みも整備されています。前経営者・後継者の双方から二重に保証を求めることは原則として避けるべきとされており、具体的な進め方は金融機関や弁護士に相談することが考えられます。

まとめ

経営者保証は、かつては「当然のもの」とされてきましたが、現在は「経営者保証に関するガイドライン」と「経営者保証改革プログラム」を背景に、外す・見直すための環境が着実に整いつつあります。鍵となるのは、①法人と個人の分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性という3要件を、日頃の経営の中で満たしていくことです。あわせて、2023年4月以降の金融機関の説明義務や、創業・信用保証付融資に関する新しい制度も、解除に向けた追い風となっています。

もっとも、既存借入の保証を外す交渉や、事業承継・廃業に伴う保証債務の整理は、金融機関との調整や法的な判断を伴い、個別事情によって最適な進め方は変わります。自社にとって何が現実的な選択肢かを見極めるうえでは、企業法務に精通した弁護士に相談することで、要件充足に向けた準備や交渉を整理しやすくなります。「経営者保証をどうにかしたい」とお考えの際は、早い段階での相談をご検討ください。

経営者保証の解除・見直しでお悩みの経営者の方へ

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。経営者保証の解除交渉や事業承継・保証債務整理に関するご相談にも対応しておりますので、横浜の弁護士にお気軽にお問い合わせください。

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※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。また、各種保証制度・支援策の要件や取扱いは変更される場合があるため、詳細は所管窓口・取引金融機関・専門家にご確認ください。

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