国際結婚・相手が外国人の不貞慰謝料|準拠法と管轄を弁護士が解説
国際結婚・相手が外国人の不貞慰謝料|準拠法と管轄を弁護士が解説
国際結婚をした配偶者に不貞行為があった、あるいは不倫相手が外国人だった——。こうしたケースでは、「そもそも日本で慰謝料を請求できるのか」「どの国の法律が使われるのか」「相手が海外に帰ってしまったらどうなるのか」といった、国内の不倫問題にはない不安が重なります。言葉や文化の違いも加わり、何から手をつけてよいか分からず立ち止まってしまう方も少なくありません。
この記事では、配偶者や不倫相手が外国人である場合の不貞慰謝料について、どの国の法律が適用されるか(準拠法)と、どこの国の裁判所に訴えられるか(国際裁判管轄)という二つの入口を整理し、諸外国との違いや相手が海外にいる場合の注意点まで、横浜の弁護士が解説します。
国際結婚・相手が外国人でも不貞慰謝料は請求できるのか
結論から言えば、配偶者や不倫相手が外国人であっても、不貞慰謝料の請求が当然にできなくなるわけではありません。特に、相手方が日本国内に住んでいる、または不貞行為が日本国内で行われたといった日本との結びつきが強い事案では、日本の裁判所で日本法を前提に請求を検討できる場面が多いといえます。
もっとも、国際的な要素を含む事案では、国内の不倫問題とは異なる二つの検討が必要です。「どの国の法律を基準に判断するのか」という準拠法の問題と、「どの国の裁判所に訴えを起こせるのか」という国際裁判管轄の問題であり、この二つは似ているようで別の問題です。
どの国の法律が適用されるか(準拠法)
日本の裁判所に事件が持ち込まれた場合、どの国の法律を適用して判断するかは「法の適用に関する通則法」(平成19年1月1日施行)というルールに従って決められます。不貞慰謝料をめぐる請求は、大きく「不倫相手(第三者)への請求」と「配偶者への請求」に分けて考えられることが多く、それぞれ性質が異なります。
不倫相手への請求は「不法行為」の準拠法で判断される傾向
不倫相手(第三者)に対する慰謝料請求は、他人の権利を侵害する不法行為に基づく損害賠償と位置づけられます。通則法17条は、不法行為によって生じた債権の成立と効力について、原則として「加害行為の結果が発生した地の法律」によると定めています。ただし、その地で結果が発生することが通常予見できなかったときは、例外的に加害行為が行われた地の法律によるとされています。
そのため、不貞行為の結果として被害が生じた地が日本であれば、日本法が準拠法となる場面が多いと考えられます。
日本法による重ねての制限(通則法22条)
準拠法が外国法となる場合でも、日本の裁判所は無条件に外国法をそのまま適用するわけではありません。通則法22条は、不法行為について外国法によるべき場合であっても、①その事実が日本法によれば不法とならないときは損害賠償その他の処分を請求できず、②外国法・日本法の双方で不法となるときでも、被害者は日本法により認められる損害賠償その他の処分でなければ請求できない、と定めています。
これは「日本法の累積適用」と呼ばれる仕組みで、外国法上は認められる請求でも日本法の枠を超えた部分はできないという上限として働き、逆に外国法上そもそも第三者への請求が認められない場合には請求が難しくなる方向にも作用します。
配偶者への請求は「婚姻の効力」の問題とされることも
配偶者本人に対する請求については、夫婦間の問題として「婚姻の効力」の準拠法(通則法25条)で判断すべきという考え方もあります。同条は、夫婦の本国法が同一であればその法、なければ同一の常居所地法、いずれもなければ夫婦に最も密接な関係がある地の法による、と段階的に定めています。もっとも、配偶者への慰謝料も不法行為として整理する見解もあり、位置づけには議論の余地があります。
準拠法の決定は、当事者の国籍・常居所・不貞行為が行われた場所などを総合する専門的な判断です。ここでの説明は一般的な枠組みであり、具体的な結論は個別の事情によって変わります。
どこの国の裁判所に訴えられるか(国際裁判管轄)
準拠法とは別に、そもそも日本の裁判所で裁判ができるのかという国際裁判管轄の問題があります。日本の民事訴訟法は、国際的な要素をもつ事件を日本の裁判所が扱えるかどうかの基準を定めています。
相手方の住所が日本にある場合
民事訴訟法3条の2は、被告となる相手方の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所が管轄権をもつことを原則としています。したがって、不倫相手や配偶者が外国籍であっても、日本国内に住所を置いて生活している場合には、日本で訴えを提起できる可能性が高いといえます。
不法行為が日本で行われた場合
また、民事訴訟法3条の3第8号は、不法行為に関する訴えについて、不法行為があった地が日本国内にあるときは日本の裁判所に提起できるとしています。ここでいう「不法行為があった地」には、加害行為が行われた地とその結果が発生した地の双方が含まれると解されています。不貞行為が日本国内で行われた事案であれば、この規定によって日本の裁判所に管轄が認められる場合があります。
| 検討する問題 | 根拠となるルール | ポイント |
|---|---|---|
| どの国の法律で判断するか(準拠法) | 通則法17条・22条・25条 | 不倫相手への請求は結果発生地法が原則。外国法でも日本法により制限 |
| どの国の裁判所で裁判するか(管轄) | 民事訴訟法3条の2・3条の3 | 相手の住所が日本、または不貞行為が日本なら日本で提訴できる場合がある |
諸外国では不倫相手への請求が認められないことも多い
日本では、不倫相手(第三者)に対して慰謝料を請求できることが広く認められています。しかしこれは世界的に見ると一般的ではなく、第三者への慰謝料請求を認める国は限られ、認めていない国も少なくないと指摘されています。そもそも精神的損害への慰謝料という枠組み自体の扱いが日本と大きく異なる国もあります。
この違いが実際に問題となるのは、準拠法として外国法が適用される場面です。仮にその国の法律が第三者への慰謝料請求を認めていない場合、日本の裁判所で争っても請求が認められにくくなることがあります。まず「どの国の法律が適用され得るのか」を見極めることが、見通しを左右します。
相手が海外にいる・帰国した場合の実務上の注意点
相手方が海外に居住している、あるいは不貞発覚後に母国へ帰国してしまったという事案では、日本国内の事件にはない手続上の負担が加わります。
- 書類の送達:海外にいる相手に訴状などを届けるには、条約や外国の機関を通じた送達手続が必要になり、国内より時間がかかることがあります。
- 証拠の収集・保全:相手が帰国すると、やり取りの記録や関係者の証言などの証拠を集めにくくなります。相手が国内にいるうちに証拠を確保しておくことが重要です。
- 判決後の回収(執行):日本で勝訴判決を得ても、相手の財産が海外にある場合、その国で改めて執行の手続が必要になることがあり、実際の回収のハードルが上がります。
こうした事情から、国際的な要素を含む事案では、早い段階での証拠保全や、相手が国内にいるうちの交渉・保全手続の検討が有効な場合があります。不倫相手が匿名でやり取りしていて連絡先が分からないケースでは、発信者情報開示請求によって相手を特定する方法を検討することもあります。
慰謝料の相場・証拠の考え方
準拠法として日本法が適用される場合、慰謝料の金額や証拠の考え方は、基本的に国内の不貞慰謝料と同じ枠組みで検討します。金額は、婚姻期間、不貞の期間や頻度、離婚に至ったかどうか、子どもの有無などを総合して判断され、一般的には数十万円から300万円程度が一つの目安とされることが多いといえます。ただしあくまで個別事情に左右される目安で、事案ごとに幅があります。詳しくは不倫慰謝料はいくらか(相場と金額を左右する要素)もご覧ください。
証拠についても、肉体関係やそれを推認させる事実を示す資料が重要になる点は国内の事案と変わりません。相手が海外へ移動する前に確保しておくことが望まれます。時効の管理も重要で、請求できることを知ったときから一定期間で権利が消滅するため、時効を止める方法(完成猶予と更新)を早めに確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
配偶者や不倫相手が外国人でも、日本で不貞慰謝料を請求できますか?
相手方が日本国内に住所を有する場合や、不貞行為が日本国内で行われた場合には、日本の裁判所に訴えを提起できる可能性が高く、準拠法として日本法が適用される場面も多いといえます。結論は個別の事情によるため、弁護士への確認をおすすめします。
どの国の法律が適用されるのですか?
日本の裁判所では「法の適用に関する通則法」に従って準拠法を決定します。不倫相手(第三者)への請求は不法行為として、原則として結果が発生した地の法律によるとされます(通則法17条)。さらに、外国法が準拠法となる場合でも、日本法上も違法でなければ賠償請求できず、賠償の範囲も日本法で認められる限度に制限されます(通則法22条)。
海外では不倫相手に慰謝料を請求できないと聞きましたが本当ですか?
不倫相手(第三者)に対する慰謝料請求を認める国は限られており、認めない国も少なくないとされています。準拠法が外国法となり、その国では第三者への請求が認められない場合、日本の裁判所でも請求が難しくなることがあります。どの国の法律が適用されるかを早い段階で見極めることが重要です。
相手が母国に帰国してしまった場合、請求は諦めるしかないですか?
諦める必要はありませんが、海外への送達、証拠の収集、判決後の海外での執行など、国内にはない負担が生じます。相手が帰国する前に証拠を保全し、交渉や保全手続を検討することが有効な場合があるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
国際結婚や相手が外国人の不貞慰謝料では、①どの国の法律で判断するか(準拠法)と②どの国の裁判所で裁判できるか(国際裁判管轄)という二つの入口を分けて整理することが大切です。相手が日本に住んでいる、または不貞行為が日本で行われた事案では日本の裁判所で日本法を前提に請求できる場面が多い一方、準拠法が外国法となる場合は、その国が第三者への慰謝料請求を認めているかが結論を大きく左右します。
さらに、相手が海外にいる事案では送達・証拠収集・執行といった負担も加わるため、見通しの立て方には専門的な検討が欠かせません。国際的な要素を含む不貞問題でお悩みの際は、早い段階で横浜の弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
国際結婚・外国人が関係する不貞慰謝料でお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料に関する数多くのご相談・ご依頼に対応してまいりました。相手が外国人・海外在住といった国際的な要素を含む事案についても、準拠法・管轄の見立てから証拠の確保、交渉・裁判の進め方まで、見通しを整理しながらサポートいたします。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。