BitTorrent 損害賠償請求の通知書の読み方と確認すべき記載事項
BitTorrent 損害賠償請求の通知書の読み方と確認すべき記載事項
BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由に発信者情報が開示されると、著作権者側から損害賠償を求める通知書が届きます。多くの方は、まず請求額の欄に目が行き、そこで思考が止まってしまいます。しかし通知書は、相手方が現時点でどこまでの情報を持ち、どのような構成で請求を組み立てているかを示す資料でもあります。読み方を知っていれば、対応方針を立てるための手がかりが得られます。
この記事では、通知書の記載事項を6つに分け、それぞれから何が読み取れるのかを整理します。通知書が届いた直後にまず何をすべきかについては、損害賠償請求の通知書が届いたら最初にすべきことで解説していますので、あわせてご覧ください。
1. 差出人——誰の名義で届いているか
差出人が著作権者本人か、代理人弁護士かで、事案の進み方は変わります。代理人が就任している場合、以後の連絡はその代理人が窓口となり、交渉も代理人との間で行われます。代理人名義の通知書は、権利者が費用をかけて弁護士に委任していることを意味しますので、放置すれば訴訟に移行する可能性を織り込んで考える必要があります。
郵送方法も確認してください。内容証明郵便は、差出人・宛先・文書の内容・差出日を郵便局が証明する制度で、後に証拠として用いるために使われます。ただし、普通郵便で届いたからといって請求が軽いわけではありません。郵送方法は証拠の残し方の違いにすぎず、請求内容の重みとは別の問題です。
2. 対象となる著作物と作品数
作品名と件数の記載を確認してください。BitTorrentの事案では、請求額が対象作品数と連動して構成されることが多く、件数は金額を左右します。
ここで確認すべきは、記載された作品すべてについて、実際に送信の事実があったといえるかという点です。監視記録は特定の日時における通信の記録ですので、作品ごとに記録の有無や内容が異なることがあります。作品数の妥当性は、請求額の妥当性を検討する出発点になります。詳しくは示談金相場と減額交渉のポイントをご覧ください。
3. 発信日時——表記がUTCかJSTか
見落とされやすいのが、日時の表記です。監視記録は協定世界時(UTC)で記録されていることがあり、日本標準時(JST)はこれより9時間進んでいます。UTC表記の午後3時は、日本時間では翌日午前0時にあたります。
複数の日時が記載されている場合は、それが継続的な送信を示すものか、単発の記録の集積かも確認してください。侵害の態様は、賠償額の検討において考慮される事情のひとつです。
4. 請求額の内訳
総額だけでなく、内訳の記載を確認してください。通知書によっては、次のような項目が計上されていることがあります。
| 項目 | 確認すべき点 |
|---|---|
| 著作権侵害による損害 | 算定根拠として著作権法114条のどの規定に依拠しているか |
| 調査費用 | 監視・特定に要した費用として計上されているか、金額の根拠が示されているか |
| 発信者情報開示手続の費用 | 手続に要した実費・弁護士費用が含まれているか |
| 弁護士費用 | 損害額に対する割合として計上されているか |
| 遅延損害金 | 起算日がいつとされているか |
不法行為に基づく損害賠償では、調査費用や弁護士費用の一部が損害として認められる場合があります。もっとも、それは請求額どおりに認められることを意味しません。何がどのような根拠で計上されているかを確認し、個別に検討することになります。
5. 回答期限——法的な期限ではないが、無視もできない
通知書には、多くの場合2週間程度の回答期限が設けられています。この期限は著作権者側が一方的に設定したものであり、法律上の効力を持つものではありません。期限を過ぎたからといって、直ちに何かの権利を失うわけではありません。
ただし、期限の経過は、交渉の意思がないと受け取られる契機になります。相手方はすでに氏名・住所を把握していますので、次の段階として訴訟を検討することが可能な状態にあります。期限内に方針が固まらない場合でも、放置ではなく、弁護士を通じて連絡を入れておくことが望ましいといえます。
なお、裁判外で支払いを請求することを法律上「催告」といい、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間、時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。つまり、通知書の到達それ自体が、時効との関係で一定の意味を持つ場合があります。
6. 同封物——示談書案と振込先の記載
通知書に示談書の案や振込先が同封されていることがあります。ここは特に注意が必要な部分です。
示談書に清算条項が含まれている場合、署名すればその内容で終局的に解決したことになり、後から金額を争うことは原則としてできません。署名前に条項を確認する必要があります。この点は示談書に署名する前に確認すべき条項で詳しく扱っています。
また、示談が成立していない段階で一部でも支払うことは避けてください。支払いは債務の承認にあたる可能性があり、承認があると消滅時効は更新され、それまでに経過した期間は無意味になります(民法152条)。「誠意を示すために少しだけ払っておこう」という行動が、法的には不利に働くことがあります。
記載がない場合に確認すべきこと
通知書の記載が簡略で、算定根拠や対象作品の詳細が示されていないこともあります。その場合、こちらから根拠の開示を求めることが考えられます。もっとも、こうしたやり取りをご自身で行うと、意図せず侵害の事実を認める内容になってしまうことがあります。相手方との直接のやり取りが不利になりやすい理由は、相手方弁護士との直接交渉が不利になりやすい理由で解説しています。
よくある質問
通知書が普通郵便で届きました。内容証明でないので軽く見てよいですか?
郵送方法によって請求の重さが変わるわけではありません。内容証明郵便は差出人・宛先・内容・日付を郵便局が証明する制度であり、証拠を残す目的で用いられます。普通郵便であっても請求そのものの内容は同じですので、記載事項を確認したうえで対応を検討してください。
通知書に書かれた回答期限を過ぎると、何か法的な不利益がありますか?
通知書の回答期限は、著作権者側が一方的に設定したものであり、法律上の効力を持つ期限ではありません。ただし、期限を経過すると交渉の意思がないと判断され、訴訟提起などの次の段階に進む契機となることがあります。期限内に回答できない場合でも、放置せず、弁護士を通じて連絡を入れることをお勧めします。
発信日時が世界標準時(UTC)で書かれています。日本時間とは違うのですか?
監視記録は協定世界時(UTC)で記録されていることがあり、日本標準時(JST)はこれより9時間進んでいます。通知書の日時がどちらの表記かによって、実際の時刻の解釈が変わります。心当たりの有無を検討する際は、表記がUTCかJSTかを確認する必要があります。
請求額に調査費用や弁護士費用が上乗せされていますが、これは支払う必要がありますか?
不法行為に基づく損害賠償では、調査費用や弁護士費用の一部が損害として認められる場合がありますが、請求額どおりに認められるとは限りません。何がどのような根拠で計上されているかを確認し、個別に検討する必要があります。
同封された示談書に署名する前に、一部だけ支払ってもよいですか?
支払いは債務の承認にあたる可能性があり、承認があると消滅時効は更新され、それまでの時効期間の経過が無意味になります(民法152条)。金額や内容の妥当性を検討する前に支払いを行うことは避けるべきです。
まとめ
通知書は、差出人・対象作品・発信日時・請求額の内訳・回答期限・同封物という6つの要素から成り立っています。それぞれに確認すべき点があり、特に発信日時の表記と同封された示談書・振込先の扱いは、判断を誤りやすい部分です。
読み取った内容は、そのまま対応方針の材料になります。作品数や算定根拠に検討の余地があるのか、期限までにどう動くのか、示談書の条項をどう扱うのか——いずれも、通知書を正確に読むところから始まります。当事務所は横浜に事務所を置いていますが、やり取りはオンラインで完結し、来所は必要ありません。ご自身での判断に不安があれば、通知書と封筒をお手元に用意して、早めに弁護士へご相談ください。
権利者から損害賠償請求(示談金請求)の通知が届いた方の対応については、こちらのページで詳しく解説しています。BitTorrent示談金請求への対応について詳しくはこちら
プロバイダから意見照会書が届いた段階の方は、こちらのページをご参照ください。
通知書の内容をどう読めばよいか、お悩みではありませんか。
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示請求・損害賠償請求への対応について、豊富な実績を有しております。通知書の記載内容の検討から示談交渉・示談書の締結まで、ITエンジニアの経験を持つ弁護士が対応します。
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