不倫相手の親に慰謝料は請求できる?家族の責任を弁護士が解説
不倫相手の親に慰謝料は請求できる?家族の責任を弁護士が解説
不貞行為をした相手にきちんと責任をとってほしい——。そう考えたとき、「本人には支払い能力がなさそうだから、親に払わせられないか」「実家の家族に事実を伝えて請求できないか」と考える方は少なくありません。相手が若く定職についていない場合や、本人が誠実に対応しないときほど、その家族に矛先を向けたくなるのは自然な気持ちだといえます。
しかし、不倫相手の親や家族に不貞慰謝料を請求できるかどうかは、法律上のハードルが高い問題です。この記事では、成人した不倫相手の親に原則として請求できない理由と、例外的に家族が関わってくる場面、そして親・家族へ連絡する際に注意すべきリスクまでを、横浜の弁護士が整理して解説します。
結論:成人した不倫相手の親に慰謝料を請求するのは原則難しい
先に結論をお伝えすると、不倫相手が成人している場合、その親や家族に不貞慰謝料を請求することは原則としてできないと考えられています。慰謝料を支払う義務を負うのは、あくまで実際に不貞行為をした本人だからです。
「家族なのだから連帯して責任を負うべきだ」という感覚を抱く方もいますが、日本の法律は、原則として自分の行為についてのみ責任を負うという考え方(自己責任の原則)を採っています。成人した子が起こした問題について、親が自動的に責任を負う仕組みにはなっていません。まずはこの原則を押さえたうえで、例外的に家族が関係してくる場面を見ていきます。
なぜ親に請求できないのか(不法行為責任は本人が負う)
不貞慰謝料は、不倫という違法な行為によって被害者の精神的苦痛を生じさせたことに対する損害賠償であり、その法的根拠は不法行為に関する民法709条・710条に求められます。民法709条は、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した「者」が損害を賠償する責任を負うと定めており、責任を負うのは加害行為をした本人です。
不貞行為は、不倫をした配偶者と不倫相手が共同して行った共同不法行為(民法719条)と整理されます。この場合に責任を負うのは、不貞行為に関与した配偶者と不倫相手の二人であって、その親や兄弟姉妹といった家族は、たとえ近い関係であっても不貞行為そのものに関与していない以上、原則として賠償義務を負いません。
つまり、「不倫相手の親だから」という理由だけで慰謝料の支払いを求めることは、法律上の根拠を欠くことになります。誰に対して請求できるのかを整理すると、次のとおりです。
| 相手 | 慰謝料を請求できるか | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 不貞行為をした不倫相手(本人) | 請求できる | 共同不法行為者として賠償義務を負う(民法709条・719条) |
| 不貞行為をした配偶者 | 請求できる | 同じく共同不法行為者。ただし夫婦関係の中で調整される |
| 成人した不倫相手の親・家族 | 原則できない | 不貞行為に関与しておらず、賠償義務を負わないのが原則 |
| 未成年で責任能力のない不倫相手の親 | できる場合がある | 監督義務者責任(民法714条)が問題となり得る |
例外①不倫相手が未成年で責任能力がない場合(民法714条)
親が責任を問われうる代表的な場面が、不倫相手が未成年で、しかも「責任能力」がないと判断される場合です。
責任能力と民法714条の監督義務者責任
責任能力とは、自分の行為が違法で責任を生じさせるものだと理解できる能力をいいます。民法712条は、未成年者がこの責任能力を備えていないときは、不法行為による損害の賠償責任を負わないと定めています。そして民法714条は、責任無能力者が第三者に損害を加えた場合に、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(典型的には親権者である親)が、代わって賠償責任を負うと規定しています。ただし、監督義務を怠らなかったとき、または義務を怠らなくても損害が生じたといえるときは責任を免れます。
したがって、不倫相手が「責任能力のない未成年」に当たる場合には、その親などに対して民法714条に基づく請求を検討する余地が出てきます。
責任能力の目安と、未成年でも本人が責任を負うケース
もっとも、未成年であればいつでも親に請求できるわけではありません。裁判例では、責任能力の有無はおおむね12歳前後を一つの目安として、年齢だけでなく本人の判断能力や事案の内容も踏まえて個別に判断されています。中学生以上、とりわけ高校生や18歳前後の年齢であれば、責任能力が認められ本人が賠償責任を負うと判断されることが一般的です。
不貞行為が問題となる場面では、当事者が責任能力を備えた年齢であることがほとんどです。そのため、実際には「未成年だから親に請求できる」という結論になるケースは限られ、責任能力のある未成年本人に請求していくことになる場合が多いといえます。
未成年者本人に責任能力が認められる場合でも、親の監督義務違反と結果との間に相当因果関係が認められれば、親自身について民法709条の不法行為責任が問題となり得るとする考え方もあります。もっとも不貞事案では認められる場面は限定的で、個別の慎重な検討が必要です。
例外②親が示談で連帯保証人になる場合
法律上は親に支払い義務がなくても、当事者の合意によって親が支払いに関わることは可能です。その代表例が、示談書(合意書)で親などの家族を連帯保証人とする方法です。
本人に十分な収入や資産がなく、分割払いにしても回収できるか不安が残る場合、本人の親に連帯保証人となってもらえれば、本人が支払わないときに保証人へ請求できるようになります。これは、支払い能力への不安をカバーする実務上の工夫として用いられることがあります。
ただし、これはあくまで親が任意に保証を承諾することが前提であり、こちらから一方的に押し付けることはできません。また、保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じないとされているため、口頭の約束ではなく、示談書にきちんと保証の条項を設けておくことが重要です。誰にいくらを、どのような条件で請求できるのかという整理は、そのまま実際に回収できるかどうかに直結します。慰謝料額そのものの考え方については、不倫慰謝料はいくらか(相場と金額を左右する要素)もあわせてご覧ください。
不倫相手の勤務先や配偶者の親に請求できるか
「勤務中に知り合った相手だから会社に責任があるのでは」「相手の配偶者にも払ってほしい」といった相談もあります。まず、使用者が被用者の不法行為について責任を負う民法715条の使用者責任は、あくまで「事業の執行について」行われた不法行為が対象です。不貞行為は業務の遂行そのものではなく私的な行為ですから、単に職場で知り合った、社内の関係だったというだけで勤務先に慰謝料を請求できるわけではありません。
また、不倫相手に配偶者がいるいわゆるダブル不倫のケースでも、相手の配偶者が不貞行為に関与していない限り、その配偶者へ慰謝料を請求できるわけではありません。かえって、こちらの配偶者と不倫相手との間で互いに慰謝料を請求し合う関係になることもあります。双方から請求が生じる場面の考え方は、不貞慰謝料の二重取りはできるかで整理しています。
親・家族へ直接連絡して請求する際の注意点
法的な支払い義務がない親や家族に対して、感情に任せて連絡や請求をしてしまうと、思わぬ形で自分が不利な立場に立たされることがあります。特に次のような行為はリスクが高く、注意が必要です。
- 不貞の事実を家族や周囲に言いふらす:名誉毀損やプライバシー侵害と評価され、逆に損害賠償を求められるおそれがあります。
- 執拗な連絡・押しかけ:支払い義務のない相手に繰り返し請求を迫る行為は、強要や脅迫などの問題となりかねません。
- 「払わなければ会社や親戚にばらす」といった言動:正当な権利行使の範囲を超えると、脅迫罪などに問われるリスクがあります。
本来の請求相手である本人ではなく家族へ矛先を向けることは、法的根拠が乏しいだけでなく、こうした逆リスクを抱え込むことにもつながります。相手方の家族や職場など第三者への連絡に伴う法的リスクについては、不倫相手の職場・会社への連絡リスクでも解説しています。請求は、法的に義務を負う相手に対して、適切な方法で行うことが大切です。
よくある質問(FAQ)
成人した不倫相手の親に、不貞慰謝料を請求できますか?
原則として難しいと考えられます。不法行為に基づく損害賠償責任は、実際に不貞行為を行った本人が負うのが原則で(民法709条)、成人した子の行為について親が当然に責任を負うわけではないためです。親が示談で連帯保証人になった場合などの例外を除き、親を相手に請求することは通常できないと解されています。
不倫相手が未成年の場合は、親に請求できますか?
不倫相手が未成年で、かつ自分の行為の責任を弁識するに足りる能力(責任能力)がないと判断される場合には、監督義務を負う親などが民法714条に基づき賠償責任を負うことがあります。ただし責任能力の有無はおおむね12歳前後を一つの目安に個別に判断され、高校生など責任能力が認められる年齢であれば本人が責任を負うのが原則です。
親を示談の連帯保証人にすることはできますか?
当事者の合意があれば、示談書(合意書)で親などの第三者を連帯保証人とすることは可能です。本人の支払い能力に不安がある場合に有効なことがありますが、あくまで親が任意に保証を承諾することが前提で、強制はできません。保証契約は書面で行う必要がある点にも注意が必要です。
不倫相手の親や家族に直接連絡して支払いを求めてもよいですか?
法的な支払い義務がない親や家族に執拗に請求したり、不貞の事実を言いふらしたりすると、かえって名誉毀損やプライバシー侵害、脅迫などの問題となり、逆に損害賠償を求められるおそれがあります。連絡の可否や方法は慎重に判断すべきで、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
不貞慰謝料の支払い義務を負うのは、実際に不貞行為をした本人であり、成人した不倫相手の親や家族に請求することは原則としてできません。例外的に問題となり得るのは、不倫相手が責任能力のない未成年で親の監督義務者責任(民法714条)が問われる場合や、示談で親が任意に連帯保証人となる場合などに限られます。
相手に支払い能力がないと感じても、家族へ矛先を向けることは法的根拠が乏しく、かえって名誉毀損や脅迫といった逆リスクを招きかねません。大切なのは、本人に対して確実に回収できる形で請求を組み立てることであり、支払い能力への不安がある場合には、財産の把握や連帯保証・分割条件の設計といった工夫が有効です。誰にどのように請求すべきか迷われた際は、早い段階で横浜の弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
不倫相手やその家族への慰謝料請求でお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料に関する数多くのご相談・ご依頼に対応してまいりました。相手に支払い能力がない、家族を巻き込みたいといったお悩みについても、法的に請求できる相手と方法を整理し、確実な回収を見据えた解決をサポートいたします。
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