民事調停を自分で申し立てる方法|費用・流れと売掛金回収への活用
民事調停を自分で申し立てる方法|費用・流れと売掛金回収への活用
取引先が売掛金を払ってくれない、賃料や工事代金をめぐって相手ともめている——けれども、いきなり訴訟を起こすほどではないし、弁護士費用をかけて争うのもためらわれる。中小企業や個人経営の事業者の方から、そうしたお悩みをよく伺います。当事者の話合いでは解決できないものの、できれば穏やかに、費用も抑えて片を付けたい。そんなときに活用できるのが、裁判所を利用する「民事調停」という手続です。
民事調停は、特別な法律知識がなくても本人が申し立てられるよう制度設計されており、費用も訴訟より低額です。この記事では、売掛金トラブルなどを抱える事業者の方に向けて、民事調停とは何か、訴訟とどう違うのか、自分で申し立てる場合の申立先・費用・必要書類・手続の流れ、調停が成立したとき・不成立だったときの効力、そして自分で行う場合の限界までを、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。
民事調停とは?訴訟との違い
民事調停は、裁判所において、裁判官と一般市民から選ばれた調停委員で構成される「調停委員会」が間に入り、当事者双方の話合いによって紛争の解決を図る手続です。金銭の貸借や物の売買をめぐる紛争、交通事故、借地借家、請負代金、近隣トラブルなど、幅広い民事上の紛争が対象になります。売掛金や取引代金の未払いも、典型的な対象事案の一つです。
訴訟が「勝ち負け」を裁判所に判断してもらう手続であるのに対し、調停はあくまで当事者の合意による解決をめざす点が最大の違いです。裁判所の説明によれば、調停には次のような特徴があるとされています。手続が簡単で申立てに特別の法律知識を要しないこと、話合いによる円満な解決ができること、裁判所に納める手数料が訴訟より低額であること、非公開の席で行われるため秘密が守られること、そして通常は申立てから2〜3回の期日でおおむね3か月以内に終了するなど比較的早く解決できること、の5点です。取引関係を将来も続けたい相手との紛争では、白黒をつける訴訟よりも、関係を壊しにくい調停が適している場合があります。
民事調停を自分で申し立てるメリット・デメリット
民事調停は、本人(法人の場合は代表者など)が弁護士に依頼せず申し立てることが想定された手続です。自分で行う主なメリットとデメリットを整理すると、次のとおりです。
自分で申し立てるメリット
- 裁判所に納める手数料が訴訟より安く、弁護士費用もかけずに始められる
- 申立書の書式・記載例が裁判所ウェブサイトや簡易裁判所の窓口で入手でき、専門知識がなくても作成しやすい
- 調停委員が間に入るため、当事者だけの交渉より冷静に話合いを進めやすい
- 非公開のため、取引先との紛争を外部に知られにくい
自分で申し立てるデメリット・注意点
- 調停はあくまで話合いであり、相手方が出頭を拒んだり合意しなかったりすれば、成立しないまま終了することがある
- 相手方に出頭を強制する仕組みはなく、解決が相手の対応に左右される
- 法的な主張の組み立てや証拠の整理を自分で行う必要があり、複雑な事案では不利になるおそれがある
- 期日には原則として平日の日中に裁判所へ出向く必要がある
申立先と費用の目安
民事調停の申立先は、原則として相手方の住所地(法人の場合は主たる事務所の所在地)を管轄する簡易裁判所です。ただし、当事者間で管轄について合意がある場合などは異なることがあります。横浜市内の相手方であれば横浜簡易裁判所が申立先となるのが原則です。正確な管轄は、裁判所ウェブサイトの「申立書提出先一覧(簡易裁判所)」で確認できます。
裁判所に納める費用は、「民事訴訟費用等に関する法律」で請求額に応じて定められており、訴訟より低額に設定されています。裁判所は一例として、10万円の貸金返済を求める場合の手数料を、訴訟では1000円、調停では500円と説明しています。手数料は収入印紙で納めます。このほか、当事者への連絡等に使う郵便料(金額は裁判所ごとに異なります)や、法人の資格証明書・不動産の登記事項証明書などの取得費用が実費としてかかります。
| 費目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 請求額に応じて算定。訴訟の手数料のおおむね半額程度 |
| 郵便料 | 裁判所ごとに異なる(申立先の簡易裁判所で確認) |
| 資格証明書・登記事項証明書等 | 法人・不動産が関係する場合の取得実費 |
申立てに必要な書類と申立書の書き方
民事調停の申立ては、申立書を作成して簡易裁判所に提出する方法で行います。裁判所ウェブサイトの「民事調停で使う書式」のページに、申立書の書式と記載例が掲載されています。主に必要となる書類は次のとおりです。
- 調停申立書およびその副本(相手方の人数分)
- 当事者が法人や未成年者の場合などは、各種資格証明書(法人の登記事項証明書など)
- 不動産に関する事件は、登記事項証明書
- 手形・小切手に関する事件は、手形・小切手の写し
- 主張を裏づける証拠となる文書の写しのうち重要なもの(相手方の人数+1通)
申立書には、当事者(申立人・相手方)の氏名・住所、紛争の要点、求める解決の内容(「調停を求める事項」)、その理由となる事実関係などを記載します。売掛金であれば、いつ・どのような取引で・いくらの債権が発生したのか、これまでの請求経過などを時系列で整理して書くとよいでしょう。契約書・発注書・請求書・納品書・やり取りのメールなど、債権の存在を示す資料を証拠として添えることが、話合いを有利に進めるうえで重要です。書き方がわからない場合は、簡易裁判所の窓口で記載方法の案内を受けることもできます。
申立てから解決までの流れ
調停が申し立てられると、通常、裁判官1人と調停委員2人からなる調停委員会が構成され、調停期日が指定されます。裁判所から当事者双方に期日が知らされ、当日は当事者が交互に調停委員から事情を聴かれるのが一般的です。おおまかな流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①申立て | 申立書・添付書類を相手方住所地の簡易裁判所へ提出し、手数料等を納める |
| ②期日の指定・呼出し | 調停委員会が構成され、期日が指定される。当事者双方に期日が通知される |
| ③調停期日 | 調停委員会が双方の意見を聴き、解決案を検討・提示する(通常2〜3回程度) |
| ④終了 | 双方が合意すれば調停成立。合意に至らなければ「調停に代わる決定」または「調停不成立」で終了 |
裁判所の説明では、通常は申立てから2〜3回の期日を経て、おおむね3か月以内に事件が解決・終了しているとされています。もっとも、事案の性質や相手方の対応によって期間は変わり得ます。
調停が成立したとき・不成立だったときの効力
調停が成立した場合(民事調停法16条)
調停委員会が提示した解決案に双方が合意すると、調停成立となり、裁判所書記官が合意内容を「調停調書」に記載します。民事調停法第16条により、この調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を有し、確定した判決と同じ効力があるとされています。したがって、相手方が調停調書に定めたとおりに支払わない場合には、この調書を債務名義として強制執行(相手方の財産の差押えなど)を行うことができます。口約束や単なる示談書と異なり、履行を確保しやすい点が調停の大きな利点です。
調停に代わる決定(民事調停法17条)
合意が成立する見込みがない場合でも、裁判所は、相当と認めるときは、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な「調停に代わる決定」(いわゆる17条決定)をすることができます。この決定に対して、当事者が告知を受けてから2週間以内に異議を申し立てなければ、決定は裁判上の和解と同一の効力を持ちます。逆に、期間内に異議が申し立てられると、決定は効力を失います。
調停不成立の場合(民事調停法19条)
話合いがまとまらず「調停不成立」で終了した場合、その請求について最終的な解決を図るには、改めて訴訟を提起する必要があります。ここで重要なのが民事調停法第19条です。調停が不成立などで終了した旨の通知を受けた日から2週間以内に、調停の目的となった請求について訴えを提起すれば、調停申立ての時に訴えが提起されたものとみなされます。この場合、納めた調停の手数料は訴訟の手数料から差し引かれます。また、時効との関係でも、民法第147条により、調停の申立てには時効の完成猶予の効力が認められています。売掛金など時効が問題になり得る債権では、こうした効果を踏まえて手続の選択やタイミングを検討することが大切です。時効の起算点や完成猶予の具体的な扱いは事案により異なるため、判断に迷う場合は弁護士に確認されることをおすすめします。
自分で行う場合の限界と弁護士に依頼するメリット
民事調停は本人でも申し立てやすい手続ですが、限界もあります。第一に、調停は話合いを基本とするため、相手方が出頭しない、あるいは合意に応じないと、成立しないまま終わってしまうことがあります。第二に、法的な主張の組み立てや証拠の選び方によって、話合いの土台となる「主張の説得力」は大きく変わります。相手方の言い分に理由がある場合や、金額・条件をめぐって隔たりが大きい場合には、法的な見通しを踏まえた交渉が結果を左右します。
弁護士に依頼した場合は、調停で求める内容の組み立て、証拠の整理、期日での主張・交渉を代理して進めることができます。調停が不成立となったときに訴訟へ移行する場面でも、一貫した見通しのもとで対応できます。まずは自分で申し立ててみて、相手が非協力的な場合や複雑化した段階で弁護士に相談するという進め方も可能です。横浜のタングラム法律事務所でも、事業者の債権回収やトラブル対応について、手続の選択の段階からご相談をお受けしています。
よくある質問(FAQ)
民事調停は弁護士に依頼せず自分で申し立てられますか?
民事調停は特別な法律知識がなくても申し立てられるよう制度設計されており、裁判所ウェブサイトの書式や簡易裁判所の窓口に備え付けの用紙を利用して、当事者本人が申し立てることが可能です。ただし、争点が複雑な事案や相手方が弁護士を立てている場合などは、弁護士に依頼することで有利な解決につながる可能性があります。
民事調停の費用はいくらかかりますか?
裁判所に納める手数料は請求額に応じて決まり、訴訟より低額です。裁判所の説明では、10万円の貸金返済を求める場合の手数料は訴訟が1000円、調停は500円とされています。このほか郵便料(裁判所ごとに異なります)や、法人の資格証明書・不動産の登記事項証明書などの取得費用が実費としてかかります。
調停で合意した内容には強制力がありますか?
民事調停法第16条により、調停が成立して合意内容が調停調書に記載されると、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有し、確定判決と同じ効力があるとされています。相手方が調停調書のとおり支払わない場合は、この調書に基づいて強制執行を行うことができます。
調停が不成立になったらどうなりますか?
合意に至らない場合は「調停に代わる決定」または「調停不成立」で手続が終了します。不成立となった請求について最終的な解決を図るには、改めて訴訟を提起する必要があります。民事調停法第19条により、不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立ての時に訴えが提起されたものとみなされ、納めた調停手数料は訴訟の手数料から差し引かれます。
まとめ
民事調停は、話合いによって紛争を解決する裁判所の手続で、特別な法律知識がなくても本人が申し立てられ、費用も訴訟より低額に抑えられます。申立先は原則として相手方住所地の簡易裁判所で、申立書と証拠となる書類を用意して申し立て、通常は2〜3回の期日を経て解決をめざします。調停が成立すれば調停調書は確定判決と同じ効力を持ち、強制執行も可能です。不成立の場合も、通知から2週間以内に訴訟を提起すれば手数料や時効の面で不利益を避けられる仕組みが用意されています。
もっとも、調停は相手方の協力があってこそ成り立つ手続であり、主張の説得力や証拠の整理が結果を左右します。「自分で申し立てるべきか、他の手続がよいのか判断がつかない」「相手が話合いに応じてくれない」といった場合には、早めに弁護士へ相談することで、遠回りを避けられることがあります。横浜のタングラム法律事務所では、中小企業・個人事業者の債権回収やトラブル対応について、手続選択の段階からサポートしています。
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