不貞慰謝料を少額訴訟で請求する方法|手続きの流れと注意点を弁護士が解説
不貞慰謝料を少額訴訟で請求する方法|手続きの流れと注意点を弁護士が解説
配偶者の不貞相手に慰謝料を請求したいけれど、通常の裁判は費用も手間もかかりそうで踏み出せない――そう感じている方は少なくありません。請求額がそれほど高額でない場合、「少額訴訟」という簡易な手続きを自分で利用できないかと考える方もいるでしょう。
少額訴訟は、60万円以下の金銭請求について原則1回の審理で解決を図る制度で、本人でも取り組みやすい手続きです。もっとも、不貞慰謝料の請求で使うには向き・不向きがあり、相手の対応次第では通常訴訟に移ってしまう点にも注意が必要です。この記事では、少額訴訟で不貞慰謝料を請求する方法と流れ、費用、本人で進める際の注意点を、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。
少額訴訟とは?不貞慰謝料請求で使える場面
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の期日(審理)で判決まで進める民事訴訟の手続きです(民事訴訟法368条)。簡易裁判所で扱われ、通常の訴訟より短期間・低コストで結論が出やすいことが特徴です。
不貞慰謝料の請求は「金銭の支払を求める請求」ですから、請求額が60万円以下であれば少額訴訟の対象になります。たとえば、離婚に至らず不貞相手にのみ慰謝料を求めるケースで、請求額を60万円以内に収める場合などが考えられます。一方で、金銭以外の請求(接触禁止を約束させる等)は少額訴訟では扱えません。
なお、少額訴訟には利用回数の制限があり、同じ簡易裁判所に対して1人につき同一年内に10回までとされています。通常、個人の不貞慰謝料請求で回数が問題になることはほとんどありませんが、制度上の枠として押さえておきましょう。
少額訴訟のメリットと不貞慰謝料で使うときの限界
少額訴訟のメリットは、①原則1回の期日で判決まで進むため短期間で解決しやすいこと、②手続きが簡易で本人でも取り組みやすいこと、③勝訴判決には裁判所の職権で仮執行宣言が付され、強制執行につなげやすいことなどです。
他方で、不貞慰謝料請求で少額訴訟を使うには次のような限界があります。慰謝料の相場は事案によって幅がありますが、婚姻関係が継続し離婚に至らないケースでも数十万円から百数十万円程度に及ぶことがあり、60万円という上限に収めると本来請求できる額を下回ってしまう可能性があります。慰謝料の相場観については「不倫の慰謝料はいくら?相場の目安と金額を左右する要素」もあわせてご覧ください。
さらに重要なのは、不貞の有無や金額をめぐって相手が争う事案では、後述のとおり相手の申立てで通常訴訟に移行してしまう点です。争点が多く証拠調べに時間を要する事案は、そもそも「1回の審理」という少額訴訟の枠組みになじみません。
少額訴訟で不貞慰謝料を請求する手続きの流れ
本人で少額訴訟を進める場合、おおまかな流れは次のとおりです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①訴状の作成・提出 | 簡易裁判所に訴状を提出する。少額訴訟を求める旨を訴状に記載する |
| ②期日の指定・呼出し | 裁判所が審理の期日を指定し、被告に訴状等が送達される |
| ③審理(原則1回) | 期日に双方が出席し、その場で証拠を調べ、話合い(和解)も試みられる |
| ④判決 | 原則としてその日のうちに判決が言い渡される |
少額訴訟は「原則1回の審理」で終えることを目指すため、最初の期日までに、原告のすべての言い分と証拠を提出しておく必要があります。証拠書類や証人も、審理の日にその場ですぐ調べられるものに限られます。不貞の事実を示すメッセージや写真などは、期日前にきちんと整理して提出できるよう準備しておくことが欠かせません。証拠の集め方や証拠力については「不倫の証拠は写真だけで足りる?ラブホテルの写真の証拠力」も参考になります。
なお、2026年(令和8年)5月21日以降は、書面による申立てに加えて、民事裁判書類電子提出システム「mints(ミンツ)」を使ったオンラインでの申立ても可能になりました(本人の場合は任意、弁護士等の代理人には電子申立てが義務付けられています)。書式は裁判所ウェブサイトの「少額訴訟で使う書式」で確認できます。
訴状の提出先(管轄)と費用の目安
少額訴訟は、原則として相手方(被告)の住所地を管轄する簡易裁判所に提起します。ただし金銭請求の場合は、支払をすべき場所(義務履行地)を管轄する簡易裁判所に起こすこともできます。慰謝料などの金銭債権は債権者(請求する側)の住所地が義務履行地とされることが多く、自分の住所地を管轄する簡易裁判所に提起できる場合があります。具体的な提出先は、裁判所の「申立書提出先一覧」で確認してください。
費用については、訴えを起こす際に申立手数料(収入印紙相当額)を納める必要があります。金額は請求額に応じて定まり、たとえば請求額60万円の場合は6,000円が目安です。従来別に必要だった郵便費用は申立手数料に一本化されました。最新の正確な金額は、裁判所が公表している「手数料早見表」で確認してください。
被告が通常訴訟への移行を求めたらどうなる
少額訴訟には、被告(訴えられた側)が最初の期日で弁論をする前であれば、通常の訴訟手続に移すよう求める申述ができるという仕組みがあります(民事訴訟法373条)。この申述があると、事件はその時点で通常訴訟に移行し、少額訴訟としては審理されません。
また、当事者双方が少額訴訟を望んでいても、請求が60万円以下の金銭請求にあたらない場合や、事案が複雑で1回の審理では解決が難しいと裁判所が判断した場合には、裁判所の職権で通常訴訟に移すこともあります。不貞慰謝料は、不貞の有無・程度や減額事由などをめぐって争いになりやすく、相手が本格的に争う姿勢を見せれば、通常訴訟に移行する可能性は十分にあります。
通常訴訟に移行すると、複数回の期日を重ねて主張・立証を尽くす手続きとなり、争点整理や書面のやり取りなど専門的な対応が必要になります。この段階から弁護士に依頼して対応を切り替える方も少なくありません。争いが予想される事案では、初めから通常訴訟や調停を選ぶという判断もあります。話合いによる解決を目指すなら「不貞慰謝料の調停を自分で申し立てる方法」も選択肢の一つです。
判決後の流れ(異議申立てと強制執行)
少額訴訟の判決に不服がある場合、控訴はできず、不服申立ては判決書を受け取った日の翌日から2週間以内の「異議申立て」に限られます。異議の申立てがあると、同じ簡易裁判所で通常の手続により改めて審理・裁判が行われますが、その異議訴訟の判決に対しても控訴は禁止されています。2週間以内に異議がなければ判決は確定します。
請求を認める判決には、裁判所が職権で仮執行宣言を付します。これにより、相手が任意に支払わない場合には、判決が確定する前であっても強制執行を申し立てて回収を図ることができます。判決や和解調書に基づく強制執行は、判決をした簡易裁判所において、給料や預金などの金銭債権に対する「少額訴訟債権執行」として申し立てることもできます。
なお、少額訴訟では、被告の資力などの事情に応じて、判決言渡しの日から3年を超えない範囲で分割払いや支払猶予、訴え提起後の遅延損害金免除を内容とする判決がされることもあります。一括回収を見込んでいた場合には想定と異なる結果になり得る点も理解しておきましょう。
よくある質問
不貞慰謝料は少額訴訟で請求できますか?
請求額が60万円以下の金銭請求であれば利用できます。不貞慰謝料も金銭の支払を求める請求なので対象になりますが、相手が争って通常訴訟への移行を申し立てると少額訴訟では審理されず、通常の手続に移ります。争いが大きい事案には向かない面があります。
少額訴訟は1年に何回まで使えますか?
同じ簡易裁判所に対して、1人につき同一年内に10回までと制限されています。制限を超える場合は通常訴訟を利用することになります。
少額訴訟の判決に不服がある場合は控訴できますか?
少額訴訟の判決に対しては控訴はできず、不服申立ては判決書を受け取った日の翌日から2週間以内の異議申立てに限られます。異議があると同じ簡易裁判所で通常の手続により審理され、その判決に対しても控訴は禁止されています。
相手が判決に従わない場合はどうすればよいですか?
請求を認める判決には裁判所の職権で仮執行宣言が付されるため、確定前でも強制執行を申し立てられます。判決をした簡易裁判所で、給料や預金などに対する少額訴訟債権執行を申し立てる方法もあります。
まとめ
少額訴訟は、60万円以下の金銭請求を原則1回の審理で解決する簡易な手続きで、不貞慰謝料の請求にも制度上は利用できます。手続きが簡易で本人でも取り組みやすく、勝訴判決には仮執行宣言が付されて強制執行につなげやすいという利点があります。
一方で、請求額が60万円に制限されること、相手が争えば通常訴訟に移行すること、証拠を期日前にすべて揃えておく必要があることなど、不貞慰謝料事案ならではの限界もあります。通常訴訟との違いを踏まえて手続きを選びたい方は「不貞慰謝料を自分で請求する訴訟の起こし方」もご確認ください。手続きの選択や証拠の見立てに迷うときは、早めに弁護士へ相談することで遠回りを避けられる場合があります。
不貞慰謝料の請求方法でお悩みの方へ
タングラム法律事務所(横浜)では、不貞慰謝料の請求・回収について数多くのご相談に対応しております。少額訴訟が適するのか、通常訴訟や交渉で進めるべきか、証拠の見立てを含めて弁護士がご事情に応じた進め方をご提案します。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。